治水地形分類図の内容

治水地形分類図の見方

治水地形分類図の見方(自然地形)

山地、段丘

(解説)
 信濃川右岸には、「崖(段丘崖)」を伴った「段丘面(河岸段丘)」が広く分布しています。 段丘面は、一般的に古い時代に形成された段丘面ほど高いところにあり、洪水の被害も少なく地盤も比較的安定しています。 その段丘面の平坦な表面を雨水等で侵食されると「浅い谷」というくぼみが形成され、豪雨時にはそこに水が集中することがあります。 また、「山地」と低地が接する箇所や谷の出口には、土砂や岩屑が堆積した傾斜の大きい「山麓堆積地形」が形成されます。豪雨時には土砂災害が発生すること(する可能性)があります。 (地図は信濃川水系「大割野」、 写真は地理院地図の全国最新写真(シームレス)より)

低地(扇状地)

(解説)
 山形県内を流れる最上川の支流である寒河江川は、谷を抜けて平野に出たところで広大な「扇状地」を形成しています。 谷の出口のある頂点を扇頂といい、中腹を扇央、先端を扇端と呼んでいますが、写真を見ると扇端部に市街地が広がっていることが分かります。 扇状地は、同心円状の等高線で特徴づけられますが、治水地形分類図では等高線を表示していますので、その形状が想像できます。 また、土石流が堆積し、扇状地と似たような形状をした「沖積錐」は、治水地形分類図では、表面傾斜や地形の範囲の大きさ等から判断して、「山麓堆積地形」と「扇状地」に区分しています。 (地図は最上川水系「寒河江」ほか、 写真は地理院地図の全国最新写真(シームレス)より)

低地(氾濫平野、自然堤防、旧河道)

(解説)
 河川沿いの「氾濫平野」には、自然堤防、旧河道などの低地の微地形が見られます。 河川の氾濫が繰り返し発生すると、河川沿いに砂・礫が溜った高まりが形成されます。これを「自然堤防」といい、治水地形分類図では「微高地(自然堤防)」として取得しています。 「旧河道」は、河川が流れた跡の地形のことをいい、空中写真判読により明瞭、不明瞭の2つに分けて取得しています。 右上の写真(1962年撮影)は、阿賀野川右岸(新潟県新潟市、阿賀野市)の低地の状況を示している空中写真ですが、人工改変がされていない撮影時期の古い写真ほどくっきりと低地の微地形を見ることができます。 (地図は阿賀野川水系「新津」ほか、 写真は地理院地図の1961年~1969年写真より)

低地(砂州・砂丘、後背湿地)

(解説)
 長野県の諏訪湖から発する天竜川は、静岡県の遠州灘に流れ込みますが、海岸沿いには比高2m以上の砂の高まりが形成されています。 治水地形分類図では、波・潮流または風によって運ばれた砂が堆積した高まりを「砂州・砂丘」として取得しています。 一方、この高まりによって河川の氾濫水の排水が悪くなり、その水が長期間留まり、湿地化することがあります。 このような土地を空中写真等で氾濫平野と区別することができる場合、「後背湿地」として取得しています。 (地図は天竜川水系「袋井・向岡」、 写真は地理院地図の全国最新写真(シームレス)より)

低地(落堀)

(解説)
 「落堀」とは、河川の流水が増水して堤防を超えたり(越水)、堤防を破って(破堤)水が勢いよく流れ込んだ時に、水の圧力で地面が掘られてできた跡のことをいいます。落堀のほとんどは、しばらくすると人為的に埋められて確認することはできませんが、古い空中写真や地図からその痕跡を見つけることができます。左図は1947(昭和22)年に発生したカスリーン台風時に、 利根川右岸の堤防が破堤して洪水流が中川低地に流れ込んだときにできた落堀(跡)です。 近年の災害においても、右写真のように破堤箇所に水が溜まっている落堀を見ることができます。 (地図は利根川水系「栗橋」ほか、 写真は地理院地図の令和元年東日本台風の正射画像より)