国土地理院時報(1998,90集)目次

つくばVLBI観測局の概要

The Outline of the Tsukuba VLBI Station

測地部 大木 章一・石原 操・根本 恵造・岩田 昭雄・福崎 順洋・谷澤 勝・高島 和宏・永田 勝裕
Geodetic Department Shoichi OKI,Misao ISHIHARA,Keizo NEMOTO,Masao IWATA,Yoshihiro FUKUZAKI,Masaru YAZAWA,Kazuhiro TAKASHIMA,Katsuhiro NAGATA

要旨

平成7年度の第二次補正予算により整備が行われていたつくばVLBI観測局が完成し,平成10年度より運用が開始された。つくばVLBI観測局は,アンテナ部,フロントエンド部,バックエンド部,周波数標準部及び観測制御部から構成される。

これにより,つくばVLBI観測局,新十津川VLBI観測局,父島VLBI観測局,姶良VLBI観測局及び鹿島VLBI観測局より構成される,5局8基線の国内超長基線測量網が構築された。

現在,水準測量やGPS測量などにより,つくばVLBI観測局のアンテナ中心位置決定や座標取り付け観測を進めている。
つくばVLBI観測局は,今後,定期的な国内超長基線測量の主局として機能するとともに,国際VLBI観測事業にアジア地域を代表する観測局として参加することとなる。世界最高水準の観測局の運用開始により,世界測地網の構築やプレート運動の把握により大きな貢献をすることが可能となった。

本文[PDF:3,136KB]

GPSによる渡海水準測量

Study of Crossing River(or Sea)Leveling by GPS

中部地方測量部 白井 康友・森田 和幸・永田 勝裕・橋本 栄治・中沢 律夫・阪本 稔・野尻 英雄・丹羽 俊廣・宮口 誠司
Chubu Regional Survey Department Yasutomo SHIRAI, Kazuyuki MORITA, Katsuhiro NAGATA,Eiji HASHIMOTO, Ritsuo NAKAZAWA, Minoru SAKAMOTO, Hideo NOJIRI, Toshihiro NIWA, Seiji MIYAGUCHI


測地部 豊田 友夫・木村 勲
Geodetic Department Tomoo TOYODA, Isao KIMURA

要旨

GPSを利用して標高を求めるには,高精度なジオイド高(ジオイド面と楕円体面との差)が必要である。国土地理院では,重力ジオイド等により,日本のジオイド(JGEOID96)を7cm(平地のRMS)~20cm(山地のRMS)の精度で求め,一般に公表している。
このジオイドを利用することにより,三角点や公共基準点の標高を求めることができる。

一方,水準点の標高は,数mmの精度を必要とするためJGEOID96を利用することができない。

本稿では,渡海水準測量において,従来の測量機器の他にGPSにより求められないか,試験観測を行ったので紹介する。

本文[PDF:1,890KB]

電子基準点を利用したRTK-GPS実験

RTK-GPS Experiment Using the GPS-Based Control Station

測地観測センター 後藤 勝広
Geodetic Observation Center Katsuhiro GOTOU

測地部 石原 操,井上 武久
Geodetic Department Misao ISHIHARA, Takehisa INOUE

要旨

RTK(Real Time Kinematic)-GPSは,近年,急速にGPS測量に導入されるようになってきた。
その理由は,即時性(リアルタイム),高精度(ハイアキュラシー)という利点に尽きる。
従来GPS測量の主流は静止(スタティック)測位であった。これは複数のGPS受信機で1~数時間の観測を要し,観測終了後は一旦データを持ち寄って計算をしなければならなかった。いわゆる「後処理」型の測量方式である。
一方,RTK測位は,その名のとおり即座(リアルタイム)に,求めようとする位置が正確にわかるという画期的なシステムである。
これを導入することにより,現場で結果の確認ができ,作業効率が格段に向上し,コスト縮減にも一役買っている。

国土地理院では,全国に展開する電子基準点のうち数点を利用してRTK測位を行う実験を行ったので報告する。
これにより,電子基準点を使ったRTK-GPSの実用化に向けて一歩前進したと言える。

本文[PDF:2,511KB]

地図データの品質評価に関する調査

Research on Quality Assessment of Spatial Data

企画部 野尻 琢也・村上 広史・関口 民雄
Planning Department Takuya NOJIRI, Hiroshi MURAKAMI, Tamio SEKIGUCHI

地理調査部 長谷川 学
Geographic Department Manabu HASEGAWA

要旨

GISの利用促進を図るためには,基盤となる地図データの整備と流通が必須であるが,今後はさらに様々な整備主体による地図データが流通していくことが予想される中,地図データの品質評価はデータ作成側及び利用側の双方にとって重要な課題となっている。

本調査では,品質評価の基本構成要素の抽出,国内及び海外における地図データの品質評価の実態に関して,地図データ作成機関に対するアンケート・ヒアリング調査等の実施,品質管理及び品質評価の特徴の考察及び以上の結果に基づく今後の検討課題の整理を実施したものである。

本文[PDF:891KB]

地理情報ディレクトリデータベースの構築に関する研究

Study on Geographical Information Directory Database

国土庁土地局 奥山 祥司
Land Bureau, National Land Agency Shoji OKUYAMA

地図部 田中 靖夫・岩井 雅彦
Cartographic Department Yasuo TANAKA, Masahiko IWAI

国土庁防災局 西城 祐輝
Disaster Prevention Bureau, National Land Agency Yuuki SAIJO

要旨

地理情報の有効活用には,「どこに情報があるのか」,その情報はどのような内容を持っているのか」といった所在情報を,位置的,時間的なキーワードを用いて検索できるデータベースシステムを構築する必要がある。

一方,近年のインターネットなどの情報通信分野の発達に伴い,地理情報の所在や,利用可能性をネッワーク上で検索できる環境が注目されている。

本研究では,省際ネットワークを介して,国などの諸機関における地理的・属地的情報の所在情報を提供する「地理情報ディレクトリデータベース」の構築に関する技術開発を行っている。

本文[PDF:1,433KB]

数値地図情報のマルチメディアへの利用に関する研究

The Study on the Usability of Digital Map Information for Multimedia

建設省河川局 大野 裕幸
River Bureau, Ministry of Construction Hiroyuki OONO

測図部 柴田 光博
Topographic Department Mitsuhiro SHIBATA

要旨

本研究は,インターネット上でも利用できる形態を含むマルチメディア情報の入出力を可能とし,ユーザ・インターフェースや解析方法にCGや空間的な概念を導入したGISを試作し,それらの有効性を示すことを目的としている。

その中で本論は,マルチメディアへの数値地図情報の取り込みおよびCG作成に必要な基礎的な知識の修得とその環境の構築に関して報告する。

本文[PDF:761KB]

1997年5月八幡平澄川地すべり災害(第2報)―地すべり・岩屑なだれ・土石流の挙動と地形の特徴―

The Landslide Disaster in Hachimantai-Sumikawa in May, 1997(Second Report)
―Movement of the Landslide, the Debris Avalanch and the Mudflow, and Topographic Feature―

地理調査部 星野 実・小野塚 良三・浅井 健一・稲澤 保行
Geographic Department Minoru HOSHINO, Ryozo ONOZUKA, Ken-ichi ASAI, Yasuyuki INAZAWA

地図部 久松 文男
Cartographic Department Fumio HISAMATSU

要旨

1997年5月11日に発生した,八幡平澄川地すべりについて,ボーリングデータによるすべり面形状を面的に求めた。
すべり面等高線に示すように地すべり上段と中段は2段構造である。
また,地すべり土塊の変位量計測を林冠ギャップに着目して行った。
中段の主水平移動方向は約27°E,変位量は約50~70mである。
また,地すべり地の縦断面に変位ベクトルを投影してすべり面を推定する手法を試みた。
結果,上段と中段に分かれ円弧状である。
なお,変位量計測の林冠ギャップ分布に基づく変位追跡点の同定方法についても説明を加えた。
さらに,災害地形調査と空中写真解析による地すべり・岩屑なだれ・土石流の発生・流下・堆積と地形の特徴から,最初の地すべりにともない岩屑なだれが発生して,国道341号線赤川橋付近まで流下堆積し,その後,二次的な地すべり発生による岩屑なだれと土石流が流下して赤川と熊沢川との合流点まで達したと推定した。
また,災害前後の地形図を用いた数値地形モデル(DEM)による地形計測の結果,地すべり土塊体積は約510万m3,流出土砂量(地形差分量)は約40万m3,地すべり地内の面積は21万m3であった。

本文[PDF:8,732KB]

日本の典型地形,都道府県別一覧の作成

List of Typical Landforms of Japan by Prefectures

地理調査部 丹羽 俊二
Geographic Department Shunji NIWA

要旨

日本は自然に恵まれた国であり,多種多様な地形が見られる。
しかし,近年では地域開発に伴って貴重な地形が失われつつあり,動植物の生息の場である地形も破壊が進められている。
そこで自然保護のためにも,また地形に対する理解を深めるための教育においても,どのような地形がどのようなところに残されているのかを調べることが必要になってきた。
日本で見られる主な地形として,183種類に及ぶ地形について,現存する典型地形を都道府県別に一覧表にし,位置図に示した。

本文[PDF:696KB]

火山ガス災害危険個所の地形条件

Landform Condition of Areas with Potential Volcanic Gas Disaster

地理調査部 菱山 剛秀
Geographic Department Takehide HISHIYAMA

地理地殻活動研究センター 政春 尋志
Geography and Crustal Dynamics Reserch Center Hiroshi MASAHARU

要旨

昨年(1997)4人の登山者が死亡した福島県安達太良山を対象に,火山ガス拡散に関する水理模型実験及び数値シミュレーションを実施し,火山ガスが拡散する過程で,集積・滞留しやすい地形の特徴を整理し,地形と事故発生との関係を明らかにすることとした。

無風状態の場合,空気より重い火山ガスは,気温に比べ地表面温度が低ければ重力流となって流下するが,地表面温度が高い場合は,四方へ拡散し,標高の高い部分へも這い上がることが明らかになった。
また,ガスが流下・拡散する過程で,滞留しやすい場所や複数の噴出口から拡散したガスが集積しやすい場所が出現することも明らかになった。
こうした火山ガスの性質と拡散の状況から,ガスが流下・拡散する過程で,滞留しやすい地形は,通路が狭められたり通路の傾斜や方向が急に変化するなど,移動速度が鈍らされたり,周りを囲まれ移動方向を失う場所であり,集積しやすい地形は,周囲を斜面で囲まれた谷や窪地などの低い場所であると推論した。

水理模型実験の結果をもとに,火山ガス拡散の数値シミュレーションを行った結果,ガスの濃度が最も高いのは,ガスが噴出している地点であり,噴出地点から遠ざかるにつれて濃度は低くなり,安達太良山の火口底で噴出したガスが火口壁では数十分の一程度になることが明らかになった。

これらの結果から,安達太良山沼ノ平を対象に,火山ガスの集積・滞留しやすい条件の地形を抽出し,1997(平成9)年9月15日の事故発生地点の地形を検証したところ,事故が発生した地点では,高濃度の火山ガスが噴出していたと考えられ,地形的にも危険な個所であることが明らかになった。

本文[PDF:1,524KB]

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、以下のページからダウンロードしてください。