干渉SAR時系列解析

干渉SAR時系列解析の概要

干渉SAR時系列解析は、異なる時期の観測データを用いて作成した多数の干渉画像を統計的に処理することにより、SAR干渉画像に含まれる大気や軌道誤差に起因する誤差を低減することで、個別の干渉画像では捉えることが困難な微小な地表の動きとその時間変化を捉えることができる解析手法です。

まず、対流圏による誤差と電離層による誤差の低減処理を施した、複数の干渉画像を用意します。
次に、これら入力データに対してGNSSを使用した長波長補正を行い、さらに正規化位相分散(隣接する領域内の位相のばらつきを示す指標)に基づくマスクによって干渉画像内の品質の悪いデータを、水部マスクによって水域のデータを除外します。
これらの処理を行い得られた複数の干渉画像の位相データを位相連続化処理によって変位量に変換し,最後に位相最適化処理を行うことで,各観測日の変位量と観測期間における変位速度を推定することができるようになります。

国土地理院では、位相最適化処理では、隣接する複数の画素を平均化する処理を施したSAR干渉画像を利用する「SBAS法」という手法で解析を行っています。山間部においても比較的精度の良い画素を選択的に利用した計測が可能となるこの手法は、森林地域の多い日本の国土の変動を詳細に把握するのに適した手法と言えます。

ALOS-2の後継機として2023年度に打ち上げ予定の「だいち4号(ALOS-4)」では、観測頻度が「だいち2号」の約5倍となることから、より短期間で精度の高い結果が得られると期待されます。

国土地理院の干渉SAR時系列解析事業

国土地理院は火山時系列解析と全国時系列解析を実施しています。

火山時系列解析は、2021年から開始された時系列解析を用いた国内の火山地域の地殻変動監視事業です。従来の干渉解析だけでは検出できなかった微小な変動を捉えることに成功しています。このように、干渉SAR時系列解析を行うことで観測点が少ない山頂域における変動の検出能力が強化されます。
現在、焼岳や口永良部島など国内37火山について、解析結果を地理院地図で公開しています。

全国時系列解析は、火山時系列解析によってその有効性が確認された時系列解析を日本全国に拡大して解析を行う事業です。地盤沈下や斜面変動など、局所的で長期間にわたる微少な変動を検出することができます。国土地理院では、全国時系列解析の結果を「国家座標」の維持・管理等に活用することを目指しています。