最終更新日:2015年8月4日

2015年4月25日ネパールの地震に伴う地殻変動

合成開口レーダー(SAR)解析による地殻変動

作成:2015年04月30日 最終更新日:2015年08月04日 English version of this page

地殻変動の特徴

2015年4月25日にネパールでMw7.8(USGS)の地震が発生しました。日本の地球観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR-2)のデータを干渉解析して、地震に伴う地殻変動を検出しました。

5月17日までに観測されたデータから、以下のことが分かりました。

【地殻変動の特徴】
- 4月25日の本震について -
  • 地震に伴う20cm以上の地殻変動が見られる領域は、カトマンズ北東約20kmの地点を中心として、東西約150km、南北約100kmの範囲に広がっています(図6、図7)。
  • 変動域の南部では隆起、北部では沈降の変位となっています(図6)。
  • カトマンズ北東約20kmの地点の周辺が最も隆起量が大きく、最大で約1.4m隆起したとみられます(図6)。
  • カトマンズは約1m以上隆起し、約30cm西向きに変位したとみられます(図6、図7)。また、局所的な地盤沈下と考えられる変動も検出されました(図5)。
  • 地殻変動が見られる領域と余震域とは調和的です(図1、図2、図4)。
  • 地表地震断層の出現は明瞭には認められません(図1、図2、図4)。
- 5月12日の最大余震について -
  • 最大で70cm以上変位したことがわかりました(図3)。
  • 本震と同様に、変動域の南部では隆起、北部では沈降の変位となっています(図3、図6)。
  • この余震は、本震時に大きく滑っていない領域で発生したと考えられます(図1-4)。

【断層モデルの推定結果(図9)】
  • カトマンズの北東20-30kmの領域の直下に、最大4m超の滑りが推定されました。
  • やや右横ずれ成分を含む逆断層滑りが推定されました。この結果は、地震波の分析とも整合しています。
  • 推定されたMwは7.9 (地震モーメント:8.2×1020 Nm)です。
  • 滑りの中心域は、震源から東南東に約80kmの位置に推定されます。本震から西側には大きな滑りが見られないことから、破壊は主に東方向に進んだと考えられます。

なお、今後より詳細な分析等により、今後内容が更新されることがあります。

干渉画像

(画像をクリックすると拡大表示できます。)

画像:図1

図1 [PNG: 2.22MB]

画像:図2

図2 [PNG: 1.93MB]

画像:図3

図3 [PNG: 2.70MB]

画像:図4

図4 [PNG: 2.47MB]

画像:図5

図5 [PNG: 2.04MB]


番号
地震
*1
観測日 観測時間
(UTC)
衛星
進行
方向
電波
照射
方向
観測
モード
*2
入射角 垂直
基線長
KMZ*3
1 本/余 2015-04-05
2015-05-17
06:13頃 南行 W-W 26°-50° -95m 2.8MB
2 2015-04-05
2015-05-03
06:13頃 南行 W-W 26°-50° +7m 2.2MB
3 2015-05-03
2015-05-17
06:13頃 南行 W-W 26°-50° -102m 2.3MB
4 2014-09-20
2015-05-16
18:17頃 北行 F-W 28°-35° -397m 0.4MB
4 2015-02-21
2015-05-02
18:17頃 北行 F-F 33°-39° -118m 0.4MB
4 本/余 2014-11-15
2015-05-16
18:17頃 北行 F-W 38°-44° -81m 0.3MB
5 2014-11-07
2015-05-08
06:20頃 南行 U-U 31° +301m 6.5MB

*1 地殻変動の主な原因となった地震。本:4月25日の本震、余:5月12日の最大余震。
*2 W:広域観測(Normal)、F:高分解能(10m)、U:高分解能(3m)
(参考: ALOS-2プロジェクト/PALSAR-2(JAXA)
*3 お使いの環境によっては、ファイルをダウンロードする際に拡張子の.kmzが.zipに変換されてしまう場合があります。その場合はダウンロードしたファイルの拡張子を.kmzに書き換えて下さい。

解析:国土地理院   原初データ所有:JAXA
本成果は、地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動を通して得られたものです。

変動の準上下成分及び準東西成分

(画像をクリックすると拡大表示できます。)
 

画像:図6

図6. 準上下成分 [PNG: 3.01MB]

画像:図7

図7. 準東西成分 [PNG: 3.12MB]

 

【2.5次元解析】
複数の方向からの観測データによる干渉画像を利用して、変動を準上下・準東西方向に分離することができます。

画像:2.5次元解析の概念図
図8. 2.5次元解析の概念図

震源断層モデル

画像:震源断層モデル
図9

地震概要

【本震】
地震発生日時 2015年4月25日 11時56分(現地時間)、2015年4月25日 15時11分(JST)
2015年4月25日 06時11分(UTC)
震源位置 28.147°N, 84.708°E 深さ:15.0 km(USGS, 2015年4月30日現在)
マグニチュード Mw=7.8 (USGS, 2015年4月30日現在)
死者数 約8,900人超 (余震含む、2015月6月8日現在)

 【最大余震】
地震発生日時 2015年5月12日 12時50分(現地時間)、2015年5月12日 16時05分(JST)
2015年5月12日 07時05分(UTC)
震源位置 27.809°N, 86.066°E 深さ:15.0 km(USGS, 2015年8月3日現在)
マグニチュード Mw=7.3 (USGS, 2015年5月20日現在)

分析に使用した人工衛星

日本の地球観測衛星 「だいち2号」(ALOS-2)

広報・講演・論文発表

  • Kobayashi, T., Y. Morishita, and H. Yarai (2015), Detailed crustal deformation and fault rupture of the 2015 Gorkha earthquake, Nepal, revealed from ScanSAR-based interferograms of ALOS-2, Earth Planets Space, 67:201, doi:10.1186/s40623-015-0359-z. [html] [PDF: 4.51MB]
  • Morishita, Y., T. Kobayashi, and H. Yarai (2015), Measuring Crustal Deformation Caused by the Nepal (Gorkha) Earthquake Using ALOS-2 SAR Interferometry, S43D-2828, 2015 AGU Fall Meeting. [abstract]
  • 小林知勝、森下遊、矢来博司(2015)、ALOS-2 干渉 SAR データから得られたネパール(Gorkha)地震の震源断層モデル(日本地震学会2015年度秋季大会)
  • 森下遊、小林知勝、矢来博司(2015)、ALOS-2 干渉 SAR によるネパール(Gorkha)地震に伴う地殻変動の計測(日本地震学会2015年度秋季大会)
  • 森下遊、小林知勝、矢来博司(2015)、ALOS-2 干渉 SAR によるネパール(Gorkha)地震に伴う地殻変動の計測(日本測地学会第124回講演会)
  • 森下遊、小林知勝、矢来博司(2015)、ALOS-2データによって検出されたネパールの地震に伴う地殻変動と震源断層モデル(日本地球惑星科学連合2015年大会) [要旨PDF: 79KB]
  • 国土地理院(2015)、ネパールの地震、地震予知連絡会会報、第94巻、377-379. [PDF: 4.80MB]

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問い合わせ先


 室長  矢来 博司(YARAI Hiroshi) 029-864-6925
 主任研究官  小林 知勝(KOBAYASHI Tomokazu) 029-864-6156
 研究官  森下 遊 (MORISHITA Yu) 029-864-6549
問い合わせ先

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