地理地殻活動研究センター談話会 講演要旨集(2006年)

1.測地データから探る十勝・根室沖地震の震源域
西村 卓也 (地殻変動研究室)

地殻変動データから1952年十勝沖(M8.1)、1973年根室半島沖(M7.4)、2003年十勝沖地震(M8.0)の滑り分布を推定した。1952年、1973年の地震については、水準測量、三角・三辺測量のデータを利用し、2003年の地震については、GPSと水準測量のデータを用いてその滑り域を比較した。1952年と2003年の十勝沖地震の滑り域は、ほぼ同じと推定され、1973年の大きな滑り域とは、100km程度のギャップがある。このギャップは、2003年の地震の余効すべり発生域の中心となっている。この結果は、最近のアスペリティ理論から指摘されるプレート境界での地震性・非地震性すべりの棲み分けを支持するものである。

2.地球自転速度変動と大気の流れ ~気圧データに基づく推定手法~
眞﨑 良光 (宇宙測地研究室)

宇宙測地観測で得られる地球回転パラメータのうち、UT1は地球自転の回転角を表しており、その変化率は地球の自転速度を与える。自転速度変動を引き起こす最大の原因は地球大気(帯状風)である。大気による自転速度変動は大気角運動量関数を用いて評価できるが、今回、高層大気の気圧傾度を自転速度変動の指標として導入したところ、本指標と観測される自転速度変動との間に強い相関があることが分かった。発表では、本手法について、その適用例とともに紹介する予定である。

日時:  平成18年12月1日(金) 15時15分~16時40分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センターセミナー室(本館6階)

1.豊後水道のスロースリップ
小沢 慎三郎 (地殻変動研究室)

豊後水道において、過去2度にわたって、スロースリップが発生している。本研究では、過去2度のスロースリップの破壊過程をGPSデータから推定し、比較した。その結果、1997年のスロースリップでは、破壊が四国南西部で発生し、その後、豊後水道の方に伝搬していく様子が推定された。一方、2002年のスロースリップでは、豊後水道で破壊がはじまり、その後豊後水道北部、および四国南西部に滑りが伝搬している様子が推定された。即ち、2つのスロースリップは滑り領域、マグニチュード共に、似通っているが、その滑り過程が違っていたという結果が得られている。

2.新潟県中越地震による小崩壊の分布特性 ~7月豪雨による崩壊との比較~
岩橋 純子 (地理情報解析研究室)

新潟県中越地震による小崩壊のデータ(平成16年新潟県中越地震1:25,000災害状況図から)と、同じ年に隣接地域で発生した2004年7月豪雨による小崩壊のデータ(新潟大学山岸宏光先生ご提供)を用いて、地震と豪雨によって起きる小崩壊の発生条件の違いを調べた。その結果、両者には、斜面傾斜と崩壊率の関係や、斜面型と崩壊率の関係に違いが見られる事が分かった。

日時:  平成18年10月6日(金) 15時15分~17時00分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センターセミナー室(本館6階)

1.干渉SAR解析で明らかになった1993年の伊豆半島内陸部における隆起変動の空間分布
矢来 博司 (地殻変動研究室)

1993年8月頃から94年2月末まで伊豆半島内陸部で発生していた微小な地震に同期し,冷川峠付近を中心とした隆起がGPS観測および水準測量で捉えられていた.この地殻変動の空間分布をJERS-1データの干渉SAR解析により面的に明らかにし,地殻変動モデルを推定する。

2.東海・東南海地域のプレート間カップリング
水藤 尚 (地殻変動研究室)

2000年から継続していた浜名湖直下を中心とするスロースリップ(SSE)は2005年夏以降徐々に小さくなり、現在ではほぼ終息したと考えられている。浜名湖下でのスロースリップが停滞し始めるのとほぼ同時期に渥美半島から志摩半島周辺で隆起が観測され始め、伊勢湾下へとスロースリップが移動した可能性が見出された。本発表では、浜名湖下から伊勢湾下へのスロースリップの移動の可能性を議論し、東海および東南海地域のプレート間の歪の解放・蓄積様式について報告する。

日時:  平成18年9月8日(金) 15時15分~17時00分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センターセミナー室(本館6階)

準天頂衛星による高精度測位補正情報の生成・配信に関する技術開発
福崎 順洋(宇宙測地研究室)

準天頂衛星とは、仰角60°~80°付近(準天頂)を通過する軌道を有する測位・通信衛星であり、平成21年度打上げを予定している。この準天頂衛星を経由し測位補正情報を配信してネットワーク型RTK-GPS測位を行うために必要な技術の開発を行っている。平成17~19年度の3ヶ年で高精度測位補正情報を生成・配信し測位を行うシステムを構築する計画で技術開発を進めており、平成17年度には電子基準点データを用いた高精度測位補正情報の生成・配信技術の基礎設計を行った。 講演では、その基礎設計結果と精度評価のための測位実験の結果について報告する。

日時:  平成18年7月7日(金) 15時15分~16時00分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)

白神山地・泊の平地区における地生態学図の試作
佐藤 浩(地理情報解析室)

世界自然遺産・白神山地は、人為的な影響の少ないブナを主体とする森林が広がり、地形に応じた植生の立地を調べる地生態学的調査には絶好の場所である。泊の平地区の約4平方kmにおいて、現地調査と航空レーザ測量データ、航空ハイパースペクトル測量データを組み合わせて地生態学図を試作したので、その結果と手法を報告する。

地殻変動による伊豆東部地震活動の予知の試み
村上 亮(地理地殻活動総括研究官)

伊豆半島東部では,70年代から90年代後半にかけて群発的地震活動が頻繁に発生し,その原因はマグマ活動にあると考えられている.1998年以降は,しばらく沈静化していたが,2002年頃から小規模に再開し,2006年1-4月には,やや規模の大きな活動が発生した.GPSデータを精査したところ,少なくとも2002年以降の活動では,地震活動に先行して周辺が膨張していたことがわかった.伊豆東部火山群の地下10km程度に水平に広がるシル状のマグマ溜りがあり,地震活動に先行してマグマが注入されると考えると説明できる.伸びに着目する簡単な予知を過去に遡って試行したところ,約 50%の確率で予知ができた可能性があることがわかった。

日時:  平成18年6月2日(金) 15時15分~17時00分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センターセミナー室(本館6階)

火山活動の現場からみた火山の観測情報
-岩手山・栗駒山の事例から-
土井 宣夫(岩手県総合防災室)

岩手山・栗駒山の事例から紹介する。

重力衛星GRACEデータからの地域的重力場決定の試み
黒石 裕樹(宇宙測地研究室長)

最新の日本の重力ジオイド・モデルJGEOID2004には、基盤として用いられた全球重力場モデルEGM96に起因する長波長誤差がみられる。このような誤差を低減し、日本の重力ジオイドの絶対精度を改良するため、全球重力場の中・長波長成分を高精度観測する重力衛星GRACEのデータから、日本周辺の地域的重力場を高精度決定する研究に着手した。本稿では、現在までに得られた成果を紹介する。

干渉SAR解析から推定された1993年 Klamath Falls 地震の断層モデル
矢来 博司(地殻変動研究室)

1993年9月20日に米国オレゴン州南部のKlamath Falls付近でM6.0の地震が2個発生した.この地域で地震を挟む期間での測地測量は行われておらず,地震による地殻変動は明らかになっていない.そのため,この地震に関して地殻変動データを用いた研究はこれまで行われていなかった.そこで,地震による地殻変動を明らかにする目的で,欧州宇宙機関の衛星ERS-1,ERS-2のSARデータを利用して干渉SAR解析を実施した.発表では,解析で得られた地殻変動と推定された断層モデルについて述べる.

新潟県中越地震による小崩壊(表層崩壊)の分布特性
~平成16年新潟県中越地震1:25,000災害状況図のデータから~
岩橋 純子(地理情報解析研究室)

昨年12月に国土地理院地理調査部によって作成された「平成16年新潟県中越地震1:25,000災害状況図」のデータから、「山古志」図幅を中心に、「斜面崩壊地(小)」の凡例を取り出し、ArcGISを利用して、地形・地質条件との関係を解析した。その結果、小崩壊は一般の山地斜面や、比較的古い地層で起きやすかったこと、南向きあるいは南東向き斜面で起きやすかったことなどが分かった。

日時:  平成18年3月3日(金) 13時15分~17時00分
場所:  国土地理院 地図と測量の科学館オリエンテーションルーム

衛星画像から捉えたパキスタン北部地震の被害
小荒井 衛(地理情報解析室長)

2005年10月8日にパキスタンの首都イスラマバードの北北東約100kmで発生したパキスタン北部地震について、様々な高分解能衛星画像が被災地を撮影しており、Web上でも広範囲に公開されている。このような状況は、今回の地震災害が初めてであり、地理情報解析研究室ではWeb上で公開されている高分解能衛星画像も含めて各種衛星画像を活用して、被害状況の把握とその地形学的な視点からの特性把握を試みたので、その結果を報告する。
 また、演者が別途、空間データ取得(地図作成)の観点から高分解能衛星画像の地物判読特性を取りまとめているので、その結果も踏まえて、各衛星画像を災害判読特性の視点から比較したい。

米軍写真と旧版地形図を利用した景観再現の試み
長谷川 裕之(地理情報解析研究室)

紙地図・航空写真など過去の国土の様子を記録した地図情報をGIS技術で加工し、過去の景観の再現を行ったので、その結果について紹介する。既存データを用いてなるべく簡易に景観を再現するため、地形データは1/25.000旧版地形図の等高線をベクトル化し、TINモデルを用いることにより作成した。航空写真は、既発表のカラー化手法を用いて彩色し、高さを考慮しないアフィン変換により簡易正射画像を作成した。得られた鳥瞰図を用いることにより、地形と植生の関係が明瞭になり、過去の景観を想像することが容易となった。

重力観測衛星GRACEを用いた地表質量異常の観測
宗包 浩志(宇宙測地研究室)

2002年にアメリカ、ドイツの共同プロジェクトとして重力観測衛星GRACEが打ち上げられた。GRACEは2つの双子衛星からなり、両者の距離をマイクロ波を用いて精密に測定することで、地球重力の微小な時間変化を観測する。その結果、地表における水分布の時間変化を知ることができる。初期解析により、アマゾン、オリノコなどの盆地において雨期、乾期に由来する水分布の季節変化を明らかにするなどの成果があがっている。
本発表では、まずGRACEプロジェクトについて概説するとともに、発表者が行った、GRACEによる水分布の地表観測による検証について報告する。

日時:  平成18年2月3日(金) 15時15分~17時00分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)

アジア・太平洋地域での地殻変動観測網構想
今給黎 哲郎 (地殻変動研究室長)

DAPHNE計画におけるGPS観測網の構想について報告する。

日時:  平成18年1月6日(金) 13時15分~14時00分
場所:  国土地理院 地理地殻活動研究センター セミナー室(本館6階)