解析時の放射基線中心点の切り替わりが解析結果に影響した事例

 2021年2月21日から2021年2月24日にかけて、電子基準点日々の座標値が地域的に、一斉に跳びが見られた事例を示します。
電子基準点日々の座標値の跳びが見られる事例
図1 電子基準点日々の座標値の跳びが見られる事例(比高変化グラフ)

跳びの原因

 「電子基準点日々の座標値」は、日本周辺のIGS 観測点から求めた電子基準点「つくば1」の座標値を固定して、各電子基準点の座標値を算出しています。しかし、この固定点から全ての各電子基準点と直接基線を結んで解析している訳ではありません。解析の品質保持と解析時間の短縮を図るために、階層的なネットワークを作り、基線解析を行っています。

 具体的には、まず、全国から選定した約20点の電子基準点から成る「バックボーンクラスタ」を作成し、「つくば1」からバックボーンクラスタに所属する電子基準点の座標を求めます。次に、それらの座標を用いて、その他の電子基準点の座標を求めます。この際、1つのクラスタが20点程度となるような小さなクラスタ(1点の電子基準点から残りの約19点に基線が伸びるような形状。この1点を放射基線中心点と呼びます。)を作り、基線解析を行います。
 したがって、バックボーンクラスタに所属する電子基準点や、放射基線中心点の座標が跳んでしまうと、小さなクラスタに所属する電子基準点の座標も跳んでしまいます。

 2021年2月21日から2月24日にかけて、電子基準点「硫黄島1」が欠測しました。この観測点は、前述した放射基線中心点であり、「母島」「父島A」「P父島A」「硫黄島2」「沖ノ鳥島」「南鳥島」等が属しています。放射基線中心点が欠測した場合、付近の電子基準点が代替点として選ばれ、今回は「硫黄島2」が選ばれました。放射基線中心点が切り替わり、クラスタの形状が変わること等により解析に含まれるノイズの傾向が変化し、座標値が跳びました。
 なお、解析手法(基線の組み方)の詳細については国土地理院時報 を参照ください。
 また、解析における放射基線中心点の情報や、その切り替わりに関する情報は、研究者向けデータとして提供している解析クラスタのファイルやサマリーファイルをご確認ください。

結論

 上記のことから、図1に見られる跳びは、放射基線中心点が切り替わったことにより発生したものと推測されます。