傾斜量図判読例  リニアメントの判読

 



  下図は、新潟県東蒲原郡三川村の沼越峠断層付近の傾斜量図である。地質図(角ほか,1985)によれば、沼越峠断層は、図上下方から点[1]まで続いている。傾斜量図上で、断層に対応するリニアメントが容易に判読できる。区間[1]~[2]では、断層の両側で、傾斜量図の色調が著しく異なる(東側が白い)。これは、断層の西側の花崗岩に較べ、東側の凝灰岩(火砕流堆積物を含み、凝灰質砂岩を伴う)が侵食されやすく、侵食が十分進んだため傾斜が緩やかとなり、東側が白色を呈するものと推測される。区間[2]~[3]では、断層の両側が同年代の花崗岩(五頭花崗岩)であるにもかかわらず、傾斜量図の色調が異なる(西側が黒い)。これは、沼越峠断層が東落ち(活断層研究会,1991)であることから、相対的に隆起した西側部分で侵食がより活発となったため傾斜が急になり、西側が黒色を呈するものと推測される。傾斜量図においては、区間[3]~[4]は区間[2]~[3]と同様のパターンを示すが、角ほか(1985)には断層の記載がなかった。以上を総合し、沼越峠断層は点[4]まで延長されるかもしれないと推測した。そこで、他の既存資料を調べたところ、経済企画庁総合開発局(1973)、国土庁土地局 (1982)、活断層研究会(1991)における断層の記載は、角ほか(1985)と同様であったが、北陸地方土木地質図編纂委員会(1990)では、推測と同じく点[4]まで沼越峠断層が伸びていると記載されていてた。
  以上の経緯は、傾斜量図の観察により、断層の延長が推測できる可能性を示している。
 なお、文中の[1]~[5]は、図中の丸がこみされた数字1から5に対応する。
 
[参考文献]
活断層研究会(1991): 新編日本の活断層-分布図と資料-,東京大学出版会,436p.
経済企画庁総合開発局(1973): 土地分類図(新潟県)
国土庁土地局(1982): 土地保全図(新潟県)
角靖夫・笹田政克・広島俊男・駒沢正夫 (1985): 1:200,000地質図 新潟,地質調査所
北陸地方土木地質図編纂委員会(1990): 北陸地方土木地質図,国土開発技術センター

 


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