東京スカイツリーの高さを精密に測量

~18桁精度の可搬型光格子時計による一般相対性理論の検証実験~

発表日時:2020年4月7日(火)

国土地理院及び理化学研究所の高本 将男 専任研究員と東京大学大学院工学系研究科の香取 秀俊 教授(理化学研究所 チームリーダー/主任研究員)らの共同研究グループは、超高精度な可搬型光格子時計を用いて、東京スカイツリーの地上階と地上450メートルの展望台に設置した2台の時計の進み方の違いを測定し、標高差と比較することで、一般相対性理論を高精度に検証することに成功しました。
なお、本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費特別推進研究(JP16H06284)及び科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」(JPMJMI18A1)の一部支援を受けて行われ、研究成果は、2020年4月6日(英国時間)発行の英国科学誌「Nature Photonics」に掲載されます。

国土地理院の役割

東京スカイツリーの地上階と展望台に設置した2台の光格子時計から一般相対性理論の検証を行うには、2台の時計の標高差を精密に計測する必要があります。国土地理院は、標高計測技術の専門機関として、GNSS(全地球測位システム)測量、水準測量、トータルステーションによる距離観測を組み合わせ、東京スカイツリーの地上階と展望台の標高差をセンチメートルの精度で算出しました。また、地上階と展望台において重力加速度の測定を行い、重力ポテンシャル差を算出しました。

研究の意義

アインシュタインの一般相対性理論により、標高が高い、すなわち重力ポテンシャルが大きいほど、時計の進みが速くなることが知られていますが、その影響はごくごくわずかで、これまでの技術では標高の違いが時計の進み方に与える違いを地上で計測することは困難でした。しかし、光格子時計を使って、重力場(重力ポテンシャルの違い)を把握し標高に応じた時計の進み方の違いを計ることにより、離れた2地点間の標高差をセンチメートルレベルの高精度で計測することが可能になります。
光格子時計で計る時間の進み方の違いは、お互いの距離が長くなっても誤差の累積を生じません。そのため、短距離では誤差が小さい一方で長距離では累積誤差が生じる水準測量を補完する技術として、標高基準系の効率的な維持管理に活用が期待されます。また、実時間で計測が可能で、かつ長期間にわたって安定して計測できるという特徴を活かし、GNSSと組み合わせて、数時間から数年というスケールで起こるさまざまな地震・火山現象にともなう地殻変動(標高変化)の計測に活用が期待されます。
国土地理院は、測地学的な観点で重力場を把握し、標高基準系の維持管理や地殻変動計測への応用を目指し、今後も連携して研究をすすめてまいります。

問い合わせ先

〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番 国土交通省国土地理院
<測量に関すること>
測地部          物理測地課長      越智久巳一  TEL:029-864-4767(直通)
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<相対論的測地学に関すること>
地理地殻活動研究センター 宇宙測地研究室長    宮原伐折羅  TEL:029-864-4832(直通)
                                FAX:029-864-2655

詳しく知りたい方へ

「可搬型光格子時計による一般相対性理論の検証実験」について、詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

<東京大学「香取プロジェクト クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」へのリンク>

https://www.katori-project.t.u-tokyo.ac.jp/freedom/2020_1_press/2020_1_press.html

<東京大学報道発表資料へのリンク>
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/soe/press/setnws_202004071401382830455235.html