国土地理院時報(1998,89集)目次

電子レベルを用いた精密水準測量

Precise Leveling for Digital Level

測地部  豊田友夫
Geodetic Department Tomoo TOYODA

要旨

水準測量は、様々な条件下でレベルを正確に水平に整置し、標尺の目盛を正確に読み取ることによって高低差を得る技術であり、熟練の技術を要してきた。

電子レベルは、これまでの目読みのレベルに置き換わる第2世代のレベルであり、地上測量分野においては純粋な技術面からみてGPSによる革命と並び称されるものである。

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日本および極東地域における地磁気変化モデルの作成

Modeling of the Geomagnetic Field Changes in Japan and the Far East

測地部  藤原 智・田辺 正・西修二郎・松坂 茂
Geodetic Department Satoshi FUJIWARA、 Tadashi TANABE、 Shujiro NISHI、Shigeru MATSUZAKA


ロシア地球磁気・電波伝播研究所 V.Pゴロブコフ・S.V.フィリポフ
IZMIRAN, Russian Academy of Sciences Vadim P. GOLOVKO、Sergey V. FILIPPOV

要旨

地震など地殻起源の局所的な地磁気変化を検出するためには、地球深部や地球外部に起源をもつ地磁気変化を取り除く必要がある。
ロシア国の地球磁気・電波伝播研究所との共同研究により、日本海をはさんだ極東地域の地磁気観測データを用いて精密な地磁気変化モデルを作成した。
この技術は磁気図の作成や地磁気連続観測にも応用でき、日本地域における標準磁場モデルを作成することができる。

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日本列島の地殻水平歪

Horizontal Strain in Japanese Islands

地殻調査部  石川 典彦
Crustal Dynamics Department Norihiko ISHIKAWA


測地観測センター 多田 堯
Geodetic Observetion Center Takashi TADA


京都大学防災研究所  橋本 学
DPRI, Kyoto University Manabu HASHIMOTO

要旨

地震など地殻起源の局所的な地磁気変化を検出するためには、地球深部や地球外部に起源をもつ地磁気変化を取り除く必要がある。
ロシア国の地球磁気・電波伝播研究所との共同研究により、日本海をはさんだ極東地域の地磁気観測データを用いて精密な地磁気変化モデルを作成した。
この技術は磁気図の作成や地磁気連続観測にも応用でき、日本地域における標準磁場モデルを作成することができる。

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南極地方の広域GPS連続観測データの解析

Wide Area Analysis of GPS Data in Antarctica

測地観測センター 山田 晃子・大滝 修・畑中 雄樹・宮崎 真一
Geodetic Observation Center Akiko YAMADA, Osamu OOTAKI,Yuki HATANAKA,Shin‐ichi MIYAZAKI

測地部 丸山 一司
Geodetic Department Kazushi MARUYAMA

地殻調査部 板橋 昭房
Crustal Dynamics Department Akifusa ITABASHI

要旨

南極昭和基地には,第36次南極地域観測隊が設置したGPS連続観測局がある。
この観測データの質のチェックをするために周囲のIGS観測局のデータとともに解析を始めた。

観測データの欠測が多かったことや長基線のため二重位相差を用いることが難しいことから,単独測位を選択した。
通常の単独測位では座標値や速度ベクトルを推定するための十分な精度が得られないため,ジェット推進研究所が開発した「GIPSY-OASIS2)」の精密単独測位解析を用いて,昭和基地とIGS連続観測局のGPSデータの解析を行った。
解析結果から座標値・速度ベクトルを算出し,プレート内変形とプレート運動の推定を行った。

昭和基地の解析結果には,推測される座標値からかなり大きなずれを生じる観測日が見られる。
その原因として,解析において受信器のタイムタグに問題があることが判明した。その原因は現在調査中である。

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3次元空間の視覚化手法

Visualization of Three‐Dimensional Space

測図部  井坂 隆・福島 芳和
Topographic Department Takashi ISAKA, Yoshikazu FUKUSHIMA

企画部  高橋 英尚

Planning Department Hidehisa TAKAHASHI

地理調査部  政春 尋志
Geographic Department Hiroshi MASAHARU

中国地方測量部  大塚 孝泰

Chugoku Regional Survey Department Takayasu OOTSUKA

要旨

近年、空間や物体の形状などの3次元モデルをコンピュータ上に作成し、直感的に把握することが可能となっている。
本研究は、1:25000地形図に基づくベクトル型数値地図情報を想定し、2次元の数値地図情報と数値地図50mメッシュ標高を用いて、把握の容易な景観として視覚化する手法を検討したものである。

3次元モデルによる視覚化は、建築設計分野で既に行われているところであるが、モデルの構築には多大な労力を必要としている。
本稿では、数値地図情報からプログラム処理により3次元モデルを作成する手法を述べるとともに、1:25000地形図レベルの情報を景観として視覚化する景観表現手法を述べ、試験作業を通じて作成した景観を紹介する。

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国土面積の計測・管理システムの開発

Development of the Measurement/Management System of Land Area

測図部  福島 康博・木村 幹夫
Topographic Department Yasuhiro FUKUSHIMA, Mikio KIMURA

地図部 前野 政克
Cartographic Department Masakatsu MAENO

東北地方測量部 鈴木 宏昭
Tohoku Regional Survey Department Hiroaki SUZUKI

要旨

近年、パーソナルコンピュータやインターネットなどの普及によって、デジタルデータによる情報処理及び情報伝達の方法が日常化されつつあることから、国土に関する情報についても、できるだけ早く、しかも多様なニーズに即応できるような情報提供が求められている。

このような情況から、測図部では、基本情報調査の一環として実施している「全国都道府県市区町村別面積調」(以下「面積調」という。)を効率的に更新し、最新の「面積調」をリアルタイムで提供するため、コンピュータによる面積調管理システムを開発し、平成9年度から運用を開始した。

本システムは、平成7・8年度の2ヶ年にわたり開発を行ったもので、エンジニアリングワークステーション(EWS)を利用したCAD(Computer AidedDesign)システムとパソコンを利用した計算管理システムからなる。
本システムを導入することにより、「面積調」更新作業が効率的に実施され、「面積調」最新情報のリアルタイム提供が可能になる。 また、「面積調」更新作業で取得した海岸線、行政界データが、数値地図25,000(海岸線・行政界)データの基礎データとして利用できるなど、効果が期待できる。

本稿では、面積調管理システムの開発に至る経緯、本システム及び作業工程の概要について紹介する。

本文[PDF:313KB]

ヘリコプター搭載レーザスキャナの標高計測精度とGISへの応用の可能性

Accuracy of Elevation Measurement with Airborne Laser Scannerand its Potential Application in GIS

企画部 村上 広史
Planning Department Hiroshi MURAKAMI

測図部 筒井 俊洋
Topographic Department Toshihiro TSUTSUI

地理調査部 中川 勝登
Geographic Department Katsuto NAKAGAWA

要旨

ヘリコプターに搭載したレーザスキャナを用いて地形を計測するシステムについて、その計測精度とGISへの利用の可能性を検証した。
その結果、位置精度(標準偏差)は、鉛直方向が10~25cm、水平方向が約1mであった。
また、二時期のデータを比較するだけで、GISデータベースの中の建物等の変化を容易に検出することが可能であることが明らかとなった。

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ナローマルチビームによる島原海域の海底流れ山地形の把握

Research of the Flow Mound Topography on the Sea Bottom off Shimabara, Kyushu,with Narrow Multi Beam Sounding System

地理調査部  丹羽俊二

Geographic Department Shunji NIWA

要旨

沿岸海域基礎調査の一環として島原沖の海底地形調査をナローマルチビーム測深システムを使用して行った。
この海域は1792年眉山が崩壊して岩屑なだれとなって有明海に流れ込み、多数の流れ山地形を形成したところである。
1980年にシングルビーム測深機で調査を行っているが、この海域の複雑な流れ山の形状を十分にとらえられなかった。

浅海用ナローマルチビーム測深システムでは水深を数m以下の間隔で測深し、水深図を作る。
これによって径数10mから200mの大小あわせて600余個の流れ山が認められた。
この詳細な海底地形図と1980年度に実施した音波探査の記録をもとに、流れ山の形態や地質について検討した。

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地球地図整備推進のための国際的合意形成

History of Activities for Getting International Agreementon the Development of the Global Map

地理調査部  丸山 弘通

Geographic Department Hiromichi MARUYAMA

要旨

建設省は、1992年に地球地図構想を提唱して以来、構想に対する国際的合意を得るためにさまざまな活動を行ってきた。
その集大成として、1997年6月に開催された国連環境開発特別総会に地球地図に関する報告書が配布され、総会採択文書に地球地図の必要性に関する記述が盛り込まれた。
さらに、同年11月に開催された「地球地図フォーラム’97 in 岐阜」の直後に開催された地球地図国際運営委員会では地球地図仕様案及び地球地図整備のための行動計画案が基本的に合意され、地球地図構想は、合意形成から実整備の段階に移った。

本稿では、地球地図構想に対する国際的合意形成に関して、建設省国土地理院がこれまで実施した活動について総括する

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各国のGIS活動状況II―米国のGIS活動状況―

GIS Activities in Overseas Countries II ―GIS Activities in the United States of America―

企画部  関口 民雄・村上 広史

Planning Department Tamio SEKIGUCHI, Hiroshi MURAKAMI

要旨

米国では、早くから、高度情報化社会の基盤として、情報通信ネットワークの整備と並んで、GISの整備が、経済発展、天然資源の利用、環境保全等に非常に重要との認識がされていたが、同時にGISのためのデータ整備に対して、関係省庁の十分な連携がないまま重複投資が行われていた。

そこで、1990年10月19日に、大統領府の行政管理予算庁(OMB:OfficeofManagementandBudget)より、「測量・図化・関連空間データの活動調整」について通達(A-16文書)が出された。
これは、全国的な空間データの整備、空間データ整備への二重投資の回避、互換性の保証、民間への広範な活用手段の提供を目的とする文書であり、この目的の実現のために、関係14の連邦政府機関の代表者から成る 「連邦地理データ委員会」(FGDC:FederalGeographicDataCommittee)が設置された。

また、1993年に公表された情報スーパーハイウエイ(国土情報基盤:NationalInformationInfrastructure(NII))構想、その翌年に提唱された世界情報基盤(GII:GlobalInformationInfrastructure)構想に見られるように、 情報基盤を国家にとって最も重要な経済資源と位置づけ、その中の基幹的な施策の一つとして「国土空間データ基盤」(NSDI:NationalSpatialDataInfrastructure)の構築を挙げている。
このような考え方は、1994年4月11日に出された「NSDI‐地理データの取得とアクセス」に関する大統領令12906号によって明らかにされている。 これは、州政府、地方自治体さらに民間の協力の下に、NSDIの整備・(行政機関だけでなく)民間でのデータ利用を促進する目的で出されたものであり、

  1. 地図・空間データのクリアリングハウスの整備、
  2. データ標準の確立、 [3]主要地図・空間データセットの早期完成、

の促進を目指したものである。
ここで用いている国土空間データ基盤は、まさしく空間データの整備を国家的な社会基盤としてとらえ、「地球上の地物やそこで起こる現象の特性と配置(位置)を記述された地理情報を集約するものである」とし、 その基盤の概念には、データそのものはもちろんのこと、広範なニーズに対応したデータを取得・加工・蓄積・流通するための技術や、政策、標準、人的資源なども含まれている。 そして、FGDCにおいて、2000年のセンサスの実施に向け、データ整備における浪費的な二重投資を避け、効果的な整備及び相互利用を図るとの観点から、国土空間データ基盤の整備とそのための連邦政府機関間の調整が現在も精力的に進められている。
米国におけるNSDI整備の状況については、前回の国土地理院時報No.88「各国のGIS活動状況1)―日米のNSDI整備事情―」を、また、大統領令12906(1994年4月11日)及びこの大統領令の根拠となった行政管理予算局のA-16文書については、 同「各国のGIS活動状況1)―日米のNSID整備事情―」付録を参照されたい。

本文[PDF:475KB]

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