国土地理院時報(2008,116集)要旨

The Revision of Altitudes of Triangulation points in Hokkaido
 
測地部 岩田昭雄
 
【要 旨】
  2008年5月1日に北海道本土全域の14,528点の三角点等の基準点標高成果を,測量の主要点として利用されている電子基準点の標高成果に準拠した数値に改定した.これにより周辺基準点の標高の整合性が向上し,より高精度な測量が実施可能になった.
  また,国及び地方公共団体等においては,所有する公共測量成果を改定した標高成果と整合させることが必要となることから,この公共測量を円滑に進めるため,標高を補正するソフトウェア「PatchJGD(標高版)」を開発し,標高補正パラメータとともに国土地理院のホームページ上で公開を開始した.
  さらに,企画部測量指導課と調整のうえ,公共測量成果を改定する際に使用する「公共測量成果改定マニュアル」の改定を行った.このマニュアルは,作業規程の準則(国土交通省告示第413号)を規範として定める国土交通省公共測量作業規程の「機器等及び作業方法に関する特例」により使用可能と位置づけられている.これら公共測量での標高成果改定の負担軽減と指針を示すために開発,改定したソフトウェア及びマニュアルは,今後,地震や火山等に伴う地殻変動の際の標高成果改定にも大いに利用可能なものである.
  本稿は,約100年ぶりとなる北海道本土全域の広域な三角点の標高成果改定に用いた計算手法や得られた成果,取り組んだ施策の概要をまとめたものである.
 
  本文[PDF:1,929KB]
 
 
The Report of Lake and Wetland survey of Sarobetsu Area, Hokkaido, Northern Japan
 
地理調査部 齋藤俊信・渡辺哲也・新西正昭
 
【要 旨】
  国土地理院では,2002(平成14)年から湖沼・湿原の保全及び,環境と調和した利用の促進に必要な基礎的地理情報を整備・提供することを目的として湖沼湿原調査を実施している.湖沼湿原調査は,湖沼の湖底地形・底質・水中植物,湿原とその周辺地域の地形及び複数時期の土地利用調査から成り,その成果を報告書,地図(報告書付図)及びGIS用のデータとしてとりまとめ提供している.
 本編では,2005~2006年にかけて北海道サロベツ地区で行った湖沼湿原調査の概要と調査結果について報告する.
 
  本文[PDF:1,924KB]
 
 
Winter-time Ground Displacement Observed at GEONET Station “Yamagata Shinjo”
 
地理地殻活動研究センター 兒玉篤郎・飛田幹男・宗包浩志・山田晃子・高野和友
北海道地方測量部 吉川正幸
東北地方測量部 阿部 馨
関東地方測量部 真野宏邦
 
【要 旨】
  山形県新庄市に設置されている電子基準点「山形新庄(940033)」は,冬季に西向き及び沈下方向に約1~2cmの局所的な変動を示すことが,以前から報告されている.その原因として,凍上,積雪荷重,レドームへの着雪によるアンテナ位相特性の変化,及び消雪のための地下水くみ上げや積雪荷重などが挙げられるものの,特定には至らなかった.
  我々は,電子基準点「山形新庄(940033)」における冬季の地盤変動と新庄市市街地における消雪のための地下水くみ上げとの関連を調べるため,2006年10月5日から2007年10月16日までGPS連続観測点(以下,「GPS固定点」という.)を新庄市の中心部に設置し観測を行った.また,GPSによるキャンペーン観測を2007年2月と10月に行った.
  解析の結果,冬季の地盤変動は消雪のための地下水くみ上げに伴う帯水層の弾性的な収縮でよく説明できることが分かった.
 
  本文[PDF:2,074KB]
 
 
Responses of Geographical Survey Institute to Basic Plan for the Advancement of Utilizing Geospatial Information
 
企画部 地理空間情報企画室
 
【要 旨】
  地理空間情報の活用推進の施策に関し,基本理念を定め国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに,地理空間情報の活用に関する施策の基本となる事項を定めた「地理空間情報活用推進基本法(以下,「基本法」という.)」が平成19年8月に施行された.また,基本法には地理空間情報の活用の推進に関する基本的な計画を策定することが規定されており,政府の「測位・地理情報システム等推進会議」において「地理空間情報活用推進基本計画(以下,「基本計画」という.)」が検討され,平成20年4月に閣議決定された.
  基本計画は,平成23年度までを計画期間とし,地理情報システム(GIS)と衛星測位の活用を通じて,誰でもいつでもどこでも必用な地理空間情報を使ったり,高度な分析に基づく的確な情報を入手し行動できる地理空間情報高度活用社会の実現を目指すこととしている.
  基本計画における国土地理院の主な施策は,地理空間情報全般の整備・更新・提供・流通に関するルールづくりのための調査・研究や地理空間情報の標準化の推進,基盤地図情報の整備・更新など多岐にわたっている.
  これらの施策を含む政府全体の施策に関し,「地理空間情報活用推進会議」(議長:内閣官房副長官補)において,「地理空間情報の活用推進に関する行動計画」(G空間行動プラン)が平成20年8月に策定され,毎年度,その進捗状況のフォローアップを行うこととしている.
 
  本文[PDF:1,424KB]
 
 
The Revision of Geodetic Coordinates of Control Points Associated with the Niigataken Chuetsu-oki Earthquake in 2007
 
測地部 岩田昭雄・成田次範・田上節雄
 
【要 旨】
  2007 年7月16 日10 時13 分頃,新潟県中越沖を震源とするマグニチュード6.8,最大震度6強を観測した「平成19 年(2007 年)新潟県中越沖地震」(以下,「中越沖地震」という.)が発生した.
  測地部では,地震活動で大きな地殻変動が認められた地域において,公共測量等に正確な位置の基準を与えるため,三角点及び水準点の緊急測量調査を実施するとともに,緊急測量調査の結果を踏まえ,さらに範囲を拡大し,高度地域基準点測量及び高精 度三次元測量を実施した.これらの測量結果に基づき,地殻変動が認められた地域の三角点406 点及び水準点39 点の測量成果の改定を,2008 年7月1日までに完了した.今回の成果改定では,想定される変動量により,地域毎に幾つかの異なる対応によって効率的に改定事業を進めた.
  本稿では,地域毎の施策と求められた改定成果に加え,公共測量での負担軽減を目的に,地震に伴う地殻変動による位置の変化を補正するために構築した補正パラメータの概要について報告する.
 
  本文[PDF:1,856KB]
 
Licensing System of Surveyors in Japan and Abroad
 
総務部 小清水寛
測図部 藤村英範
社団法人国際建設技術協会 坂部真一
 
【要 旨】
  我が国の測量制度を取り巻く社会,技術,教育環境は戦後大きく変化したが,測量制度を人材の面から支えるべき測量士資格制度は,戦後ほとんど変わっておらず,様々な課題が提起されている.
  そのような背景のもと,国土地理院長の私的諮問機関である測量行政懇談会において,測量士資格制度の改正に向けた議論が行なわれている.制度改正の議論では,資格取得における問題点や不公平といった点に力点が置かれてきたが,今後は測量士の有すべき役割や資質の見直しについて議論が必要となっている.
  測量士の有すべき役割や資質の見直しにおいては,まず,目指すべき役割と資質の像を明確化する必要があるが,それらについて検討するにあたり,まず諸外国の測量士資格制度を調査して議論の助けとすることが有効であると思われる.
  このために,国土地理院と社団法人国際建設技術協会は,地理空間情報処理を含む測量について先進的な取り組みをしていると思われるドイツ国・フラ ンス国・カナダ国・米国・オーストラリア国について,測量士資格制度の概要,資格取得方法,資格の更新,および資格取得において学歴の果たす役割に焦点をあてて調査・分析を行なったので,報告する.
 
  本文[PDF:98KB]
 
Fundamental Survey of City Block for Urban Renaissance in 2004~2006
 
測地部 高橋保博・鈴木 実・土井弘充・佐野伸明・黒田次郎・森下 一・横川 薫・渡辺政幸・高畑嘉之・橋本栄治・大島健一・川口 保
 
【要 旨】
  平成16 年度から都市部における地籍調査を推進する基礎的データを整備するために,都市再生街区基本調査事業(以下,「街区基本調査」という.)が 開始された.この事業は土地の権利関係が複雑で地籍調査事業が遅れている全国の都市部における同事業の推進を図るため,平成18 年度までの3ヵ年間に取り組まれ,国土交通省土地・水資源局国土調査課(以下,「国土調査課」という.)が事業主体となり,国土地理院と独立行政法人都市再生機構(以下,「都市再生機構」という.)が測量作業を実施した.本稿では街区基本調査における国土地理院の実施状況について報告する.
 
  本文[PDF:888KB]