測地基準系精密保持手法に関する研究

新規研究課題提案書

(課題提案者が記入)
提案課・室名
問い合せ先
課・室名:地理地殻活動研究センター宇宙測地研究室
住所:茨城県つくば市北郷1番
TEL: 029-864-1111内線8332    FAX: 029-864-2655
担当者名:宇宙測地研究室 飛田幹男
研究課題名 測地基準系精密保持手法に関する研究
研究制度名 特別研究
研究期間 平成17年4月~平成22年3月 (5年間)
1.課題分類 (1)測量事業・行政施策を支援する研究開発
2.研究開発の背景・必要性  国土地理院(つくば市)構内には、VLBI観測局、GPS連続観測点があり、一体となって国内観測の中央局及び国際観測網の宇宙測地基準局として、世界測地系及び地球基準座標系(合わせて、「測地基準系」)の構築・維持に重要な役割を担っている。これらの観測点の位置データに含まれている上下季節変動は、外国局の季節変動のように従来の理論では説明できなかったが、2003年、日本固有の変動機構であるらしいことがわかってきた。
 近年、測位精度の急速な向上に伴い、宇宙測地基準局の正確な位置が必要とされる中、上下成分の季節変動及び経年的変動をこれまでにない精度で定量的に測定することにより、その変動機構を明らかにし、宇宙測地基準局としてふさわしい位置精度を確保することが課題となっている。
 構内には、深度190mの二重管式地盤沈下計があり、0.02mm精度の地盤上下変動データを蓄積しているが、本研究の目的のためには、地下水温変化の計測やGPS・水準測量等他の測地技術との比較など、より精密な調査・研究が必要となる。
 また、つくばエクスプレス(TX)沿線開発に伴い、宇宙測地基準局の上下位置が変動する可能性があり、変動量を定量的に計測・蓄積することが測地基準系維持にとって欠かせない。
3.研究開発の目的・目標  次の4つの目標を通して、特に上下方向について、測地基準系精密保持手法を確立することを目的とする。
 1.上下変動機構(表層地盤弾性変形)の解明
 2.宇宙測地基準局の上下季節変動量精密計測
 3.経年的地盤変動の中長期的モニタリング
 4.安定地層固定型基準点の技術開発
4.研究開発の内容  既存の190m地盤沈下計を改造し、二重管の特性を生かした、これまでにない高精度・高時間分解能の上下変動観測を実現する。水田灌漑用地下水揚水という既知の巨大な地盤変動源を利用し、上下変動機構のモデル化を試みる。また、新旧GPSの観測データ他との比較により、信頼度を検証する。基盤岩以浅の全層厚変動を観測できる二重管式観測井を念頭に置き、測地基準系精密保持手法を研究する。
5.研究開発の方法、実施体制 研究の方法:
 国土地理院構内にある既存の190m地盤沈下計について、水温計設置、及び、小屋の断熱化を行い、地層厚変動データの高精度化を行う。また、管頭にGPS受信機を設置、及び、水準測量を実施し、既存GPS連続観測データ等との比較により、上下変動計測の信頼度を検証する。また、既存4本の地下水位観測井の水位データ等との比較、及び、地下水利用形態・涵養形態の調査を実施し、上下変動機構の解明を試みる。
実施体制:
 宇宙測地研究室室長1名、主任研究官1名、研究官1名にて実施する。水温計設置、小屋の断熱化、GPS設置は外注する。水温データは地理調査部のFisシステムに組み込みを予定。GPS受信機の設置は測地観測センターとの調整を予定。
6.研究開発の種類 1.基礎研究  測地基準系上下方向ミリメートル管理への挑戦
4.観測・調査 地盤上下変動データの常時取得
3.技術開発  安定地層固定型基準点という新規発想の技術開発
7.現在までの開発段階 2.試行段階  既存の190m層厚地盤沈下計の観測データは良好であり、GPS観測データとの間に矛盾がないことが確認されている。
8.想定される成果と活用方針  本研究により、宇宙測地基準局に必要とされる上下測位精度を確保し、GEONET(国内GPS観測網)固定局上下位置、IGS(国際GPSサービス)の日本の拠点であるTSKB上下位置及びVLBI観測局を補正することで、測地基準系の上下方向成分の精密な保持が可能となる。また、経年的変動に着目することで、大規模地域開発の際の地下水涵養への配慮が有効に機能しているか確認することができる。また、GPS連続観測局や水準点を安定地層に固定する新しい手法が開発されることになる。さらに、表層地盤の上下変動機構の解明により、テクトニックな上下変動の分離、及び、測地測量における誤差源の把握が可能となる。地球温暖化に伴う海面上昇の計測精度向上が期待される。
9.研究に協力が見込まれる機関名 国土交通省土地・水資源局、つくば市内の研究所(例:産総研)、つくば大学、東京大学地震研究所、都市基盤整備公団
10.関係部局等との調整 院内のみ:地理調査部と既存井戸との関連調整。測地観測センターとGPS受信機設置に関する調整。測地部の重力、水準測量、VLBIに関する調整。
11.備考  
測地基準系精密保持手法に関する研究