GPS連続観測による上下地殻変動検出手法開発に関する研究

研究課題事後評価書

(分科会で評価委員が記入)
提案課・室名
問合せ先
課・室名:地理地殻活動研究センター
TEL: 029-864-2477・内線8121   FAX: 029-864-2655
代表担当者:地理地殻活動総括研究官 村上 亮
研究課題名 GPS連続観測による上下地殻変動検出手法開発に関する研究
予算 特別研究  9,267千円
研究期間 平成12年4月 ~ 平成15年3月 (3年間)
分科会委員 〇河野宣之、笠原 稔、山岡耕春
1.成果の概要 日本列島における高密度のGPSネットワークのデータによって多くの機関でめざましい研究成果が現れているのは周知の事実である。この様な中で、データ提供だけでなく研究においても常にトップを争ってきた国土地理院の重要な成果であるGPSデータにおいては、上下変動は水平変動に対して測定精度が悪いため、これまで十分な解析が行われておらず、新たな解析法により上下変動の議論が可能であることを示した。特に、山地隆起の問題は海面変動同様、地球規模での議論が必要であり、その点に光を当てるべく成果が得られた点は評価できる。
2.当初目標の達成度 誤差の統計的性質を明らかにしたのは重要であり、このことによりGPS上下変動の信頼性を評価できるようになった。
上下変動の不動点をどうすべきかは測地学的観点だけでなくテクトニクス的観点が必要であろう。例えば飛騨山脈の隆起を議論する場合でも、「地理学の隆起」と「GPSの隆起」とは何か、という原点にもどった比較をすべきだろう。今後さらなる検討が必要である。しかし、御前崎の連続高精度比高変化データの解析手法への取り組みが不足したことは、反省点であろう。
3.成果公表状況 論文、学会、報道機関等への発表を行っており、おおむね妥当である。
4.成果活用の見込み 具体的な活用というよりは、GPSの上下変動データが役に立つことを地理院自ら示したことが、今後の地殻変動研究に繋がっていく点を評価したい。
5.達成度の分析 個人の自由な発想こそが新たな研究の端緒を開くものであり、得られた大きな成果を考慮すると、効率的であったと考えられる。
6.残された課題と新たな研究開発の方向 Mountain Tectonics は、日本列島では非常に重要である。地理院の役割として、今後、困難な状況下での山地観測を実現することを期待する。
7.その他、課題内容に応じ必要な事項 上下変動の誤差の大部分がランダムであるというけれど、10-20mmと、GPS本来の精度以上のものがあるように見える。この点の追求も必要ではないか。
総合評価  〇1.十分な成果  2.一部不満足  3.部分的成果  4.失敗

 地理院の研究の役割として、個々の細かな話題にはあまりとらわれず、GPSによって列島規模の上下変動を議論できることを示したことが最も重要な成果であると考えられる。またこの研究が学会等でのGPSデータを用いた上下変動の研究の端緒を開いた点も大きな成果である。