多次元GISによる地理情報解析に関する研究

研究課題事後評価書

(評価委員が記入)

提案課・室名
問合せ先

課・室名 : 地理情報解析研究室
TEL:0298-64-1111内線8434 FAX:0298-64-2655
代表担当者:地理情報解析研究室・佐藤 浩

研究課題名

多次元GISによる地理情報解析に関する研究

予算

地理地殻活動の研究に必要な経費 特別研究費 (総額)5,032千円

研究期間

平成 10 年 4 月 ~ 平成 13 年 3 月 ( 3 年間)

分科会委員

〇大森博雄  細村 宰  厳 綱 林

1.成果の概要

I.地震(兵庫県南部地震による宅地の地震災害と宅地化年代の関係)・火山(雲仙火山東麓・水無川流域の地形 変化)・水害(中川・綾瀬川流域の浸水危険区域と土地利用変化の関係)をモデルケースとし、GIS(土地利用デー タ、地形データなど)を用いて災害被害等の時間的および空間的変化(多次元)を解析し、有意義な変化パターンを確 認した。
II.モデルケースの研究からGISによる災害データの解析において地図データのデジタル化の精度、あいまいな災害区分 ラインが評価の結果に影響を与え得ることを問題として抽出した。

2.当初目標の達成度

災害・防災に関する空間情報を時系列的に解析する手法に関して、事例研究を行うことを目標としている。当初計画 通り、解析事例を3例採り上げ、実施した。
目標達成度は85%と判断される。

3.達成度が不十分な場合の要因分析

多次元データの定義や解析手法が「空間情報科学」で整理されていないこと事例研究に時間が割かれ、事例研究の 成果を横断的に整理することが少なかった。
また、GISの有用性を示すには、単に作業効率の向上だけでなく、GISデータの持つ特性(位置関係)を有効に発揮す る解析手法(域内の空間関係などの検討)を試行することが望まれた。

4.成果公表状況

学会発表:3回、原著論文:2編(内、1編は投稿中)、その他の報告書:3編
成果は公表されたと評価できる。

5.成果活用の見込み

本研究で実践した多次元データの解析手法は、地理院の事業における災害危険度評価での活用が見込まれる。

6.残された課題と新たな研究開発の方向

  1. 多次元データの定義の明確化や解析手法の体系づけを進展させる必要がある。
  2. GISデータが持つ特性を生かした解析を進めることにより、GISの有用性を引き出す研究が必要である。
  3. 課題の整理に当たって、個々の事例に特有な問題点のみを挙げるのではなく、3件のモデルケースを横断的に捉え、 共通した課題や解析技術の問題点を抽出する必要がある。
  4. 事例研究を通して明らかになった災害情報の作成と利用に関する問題点を整理し、従来にない危険度評価の視 点と解析方法を開発する事が望まれる。

7.その他、課題内容に応じ必要な事項

災害と土地利用変化等との関係の検討(兵庫県地震災害および中川・綾瀬川の水災害)では、「見かけの関係」が 抽出され、「真の関係(土地条件など)」が究明されていない可能性がある。すなわち、開発や土地利用の変化は土地 条件そのもの(沖積低地・台地の区分、自然堤防・後背湿地の区分等の地形・地盤条件など)に規定されていることが 多い。「見かけの関係」だけの検討では、適切な将来予測ができないことがあるので注意を要する。

総合評価  1.十分な成果  〇2.一部不満足  3.部分的成果  4.失敗

  1. 本研究の特徴は、災害関係に着目したGISデータの時系列的解析にあるが、GISデータの時系列的解析は土地利用変化、河川変動、海 岸線変動の検討などで、既に一般的に行われている。そのため、手法の新鮮味はあまり感じられない。
  2. モデルケースに関しては十分に成果を得ている。これらに共通したデータや解析手法の問題点や課題の整理、および、それに基づく提言に関 して一層の研究・検討が要請される。