ニューラルネットによる画像情報の判別手法に関する研究

研究課題事後評価書

(分科会で評価委員が記入)
提案課・室名
問合せ先
課・室名:地理地殻活動研究センター 地理情報解析研究室
TEL: 029-864-1111(内線8433)   FAX: 029-864-2655
代表担当者:地理情報解析研究室 神谷 泉
研究課題名 ニューラルネットによる画像情報の判別手法に関する研究
予算 特別研究経費 (総額)5,778千円
研究期間 平成11年4月  ~ 平成14年3月 (3年間)
分科会委員 〇大森博雄、厳 網林、細村宰 (主査に〇印)
1.成果の概要 バックプロパゲーション法で学習するニューラルネットワークの1つであるシフト不変ニューラルネットワークを用いて、画像分類を試みた。ケーススタディー画像では良好な分類結果を得て、ニューラルネットワークによって画像分類を行う可能性を再確認した。しかし、地上解像力の高い(1m程度以上)リモートセンシング画像では、画素の持つ分光スペクトル情報だけではなく面的な情報である形状情報が重要となってくる。本研究では形状情報の特徴抽出をすることなく、画像を直接ニューラルネットワークに入力することにより画像情報を判別するシフト不変ニューラルネットワークを開発し、その有効性を確認しているが、本研究開発は、基礎研究であり解明すべき問題がかなり残され、また、応用に関しても不明確な部分が多く、今後の研究に待つところが多い。
2.当初目標の達成度 分光スペクトル情報と形状情報を原データとして、ニューラルネットによる土地利用等を自動的に判別する手法の開発という目標からすると、一応は目標を達成している。しかしながら、アルゴリズムの適用に関心が払われたため、空中写真や高解像度衛星画像の分類に関する基礎問題の整理と効果の検証は不十分であり、分類種目が少ないこと等、この手法の有効性に関しては、疑義が残る。原理的な説明がきちんとされるとともに、実証性の確認が必要であろう。
3.成果公表状況 研究報告と学会での口頭発表が十分に行われている.しかし,それらの発表はアルゴリズムを適用した程度のものにとどまっていると感じた。また、学術誌における原著論文の作成が望まれる。
4.成果活用の見込み まだ一般に活用する段階には至っていない。成果活用以前に、本手法の有効性を説明することのほうが重要ではないか。
5.達成度の分析 (必要性の観点からの分析)
ニューラルネットワークが10数年前に活発に研究されていたにもかかわらず、最近研究活動が低調になってきた背景をも認識しておく必要がある。特に、多種類・多要素の自動分析処理におけるニューラルネット手法の実用性に関する基礎研究が必要と考えられる。

(効率性の観点からの分析)
500万の予算の使い方も、あまりうまくなかった。最も予算のかかった教師データのための目視判読、画像処理のパッケージERDAS Imagineの購入は本研究の課題の解決への貢献度は小さかった。

(有効性の観点からの分析)
地上解像力が高い画像の自動判別を行う場合に問題となってくる点についての基礎的な議論が十分なされていない。地点情報間における相互関係の特性の検討等が行われておらず、形状情報の特徴抽出を行った場合との比較がなされていない等の欠点が目立つ。ランレングス行列や共生起行列からハラリックの提案しているようなスカラ量を求め、自動判別を行うことにより、より良い結果が得られる可能性がある。また、ニューラルネットワークのアルゴリズムに過大な期待をかけ過ぎた感がある。

6.残された課題と新たな研究開発の方向 ニューラルネットワークにこだわらず、分光スペクトル情報と形状情報や空間情報をどのように組合せ、どのようにニューラルネットワークの中間層や結合重みに当てはめるかといった基礎問題を整理・分析したうえで、どのような分類アルゴリズムを用いることが自動分類の精度向上に貢献するかを検討し、その後、或いは、並行して、さまざまな地形,地物の表現方法を開発し、ニューラルネットワークの手法に適用して、分類精度の改善を図ることが望まれる。
7.その他、課題内容に応じ必要な事項 情報量の多さやリアルタイム・オンタイム情報の重要性からみて、地理情報の収集における省力化・自動化は実践的な重要な課題である。大量の地理情報を速やかに収集する手法を、ニューラルネットに限らず、多面的に検討するような研究が要請される。
総合評価  1.十分な成果  2.一部不満足  〇3.部分的成果  4.失敗

 ニューラルネットワークに直接画像データを入力し、スーパーコンピュータで強引に自動分類を行い、その成果だけを示している点にある。本手法の成果だけをあげることにとらわれすぎ、大局的な見方の欠如、手法に内在する基礎的問題に関する検討の不十分さが見られる。目視判読による多要素の面的分類等の従来手法との比較がないかぎり、十分な成果があがったとは言い難い。