令和4年度 地理空間情報の活用等に関する関東地域連携協議会を開催

 関東地域において産学官が地理空間情報に係る課題の認識と情報の共有を図り、地理空間情報の効果的な整備・更新・活用を推進することを目的に、平成26年度から開催している「地理空間情報の活用等に関する関東地域連携協議会」※を今年度も開催しました。

開催概要

日時:令和5年1月27日(金)13時30分~16時00分
場所:国土地理院関東地方測量部8F地震予知連絡会大会議室(Web併用)
出席者:協議会構成員(23機関及び学識経験者3名)
議事:
1.講演
2.意見交換

1.講演

  • 第4期地理空間情報活用推進基本計画
   (講師 国土地理院企画部地理空間情報企画室長 佐藤 壮紀)
  • 静岡県が目指すVIRTUAL SHIZUOKA構想とは?
   (講師 静岡県交通基盤部政策管理局建設政策課未来まちづくり室 課長代理 杉本 直也)
  • 地理空間情報の市民協働の現場での活用事例について
   (講師 (一社)地理情報システム学会 自治体分科会 代表 小泉 和久)

2.意見交換

 意見交換では、さらに3人の構成員(地方公共団体)の方から日頃の業務における地理空間情報活用の取組事例をご紹介いただき、1.の講演内容に対する質疑応答とともに、以下の3つのテーマを設定して行いました。主な意見等は以下のとおりです。

全庁的なGIS利用 -統合型GISに向けた課題-

  • 統合型GISを最初に着想した時期に比べると、VIRTUAL SHIZUOKAのように、全庁的に使える基盤データが大規模に整備され、今後は何に使うかという側面にきており、統合型という意味や意義が、時代によって移り変わってくるのではないかと思う。
  • 第4期地理空間情報活用推進基本計画では、第3期にも記載した人材育成というパートがより強調されるようになり、教育の側面においても『地理総合』にGISが盛り込まれるなど重要な局面にあると感じられる。
  • 個人情報保護法の目的は、個人情報に配慮しつつも、しっかりデータの活用もしていくということが個人情報保護法の第一条に書いてある。データの利用目的をきちんと定めることが重要で、そこをしっかり整理することでより活用が広がると考える。

システムの統合化の課題 -庁内横断的な利用-

  • 庁内基盤のGIS統合を検討する上では、どのシステムにするか、どのGISエンジンにするかよりも、「データ」に着目して全庁的に進めた方が良い。各課が自分の課のデータをよく知った上で、それらのデータを俯瞰して統括する部署が、各課に音頭を取って進めて行く形が望ましい。
  • 直接所管する部局以外で3次元データの操作や活用で工夫している点としては、ゲームエンジンを用いたデータの使い方のレクチャーや、VRも用意して作ったものを大きなモニターに映しながら自分がその中に入る体験ができる環境を整えている。

利活用の仕組み -オープンデータ化・市民協働-

  • 1市民団体で、地域へのGISの普及啓発は見える成果がすぐに出るものではない。今後、行政と協力していくこともあるかもしれないが、基本的に地域住民と一緒に地域でのGISの普及活動を続けていくメリットは大きいと感じている。
  • 3次元点群データの更新は、国土全体を均一なデータとして整備されていることが望ましいため、国土地理院の役割に期待している。民間で取得されたデータについても決められた精度や求める精度を公開して使っていくべきで、民間等電子基準点の制度と同様の流れがあってよいと思う。仮に民間ベースのほうが先に進んだときに、きちんと精度の担保があるデータが流通していくことが望ましい。

総括

  • いよいよデータがオープンになって、みんなが扱いやすい社会となっている。大学もGISリテラシーのある人材を、どんどん輩出していく必要がある。
  • 「点」としての政策が、「線」につながって、今、「面」に大きく展開しようとしている時期であると捉えている。地理空間情報の活用を分野の垣根を超えて広げていくと同時に、地域で地理空間情報の活用に手を動かす層の育成がすごく大事である。若い人材自体がネイティブに地理空間情報を使えるようになっているので、そのような方々との協働、コラボレーションをぜひ進めていけると良い。
  • 統合型GISが当たり前のように使われていて、それを作る過程でGISに対するリテラシーの醸成ができて、市民協働できるというのが基本であることが確認できた。デジタル田園都市国家構想やFIWAREなど新しい概念が出てきているが、基本は住民であり、それを実現する仕組みが統合型GISであるということを忘れないようにして欲しい。

事務局より

 今年度の講演は、地理空間情報の活用の指針となる国の政策と、地方自治体における基盤データの整備と活用事例の紹介、また市民協同による地域課題の解決を実践している取組について、3名の方からご講演いただき、最新の知見を得ることができました。
 意見交換では、日頃の地理空間情報の活用に関する官(地方公共団体)の取組について各構成員間で情報共有を図り、講演内容と合わせて多角的に意見交換を行いました。
 その結果、GIS・地理空間情報の利活用を通じた業務効率化と行政サービスの高度化を実現していく上で、基盤となるデータの整備・公開及び利用と、データを扱う人材の育成を横断的に展開していくことが重要であるとの認識が共有されました。
※関東地域連携協議会の構成員は以下のとおりです。
(産)埼玉県GIS普及推進研究会、NPO法人全国G空間情報技術研究会関東中部G空間情報技術研究会、(一社)全国測量設計業協会連合会関東地区協議会、(一社)全国測量設計業協会連合会東京地区協議会、(一社)地理情報システム学会自治体分科会(臨時)
(学)後藤真太郎教授(立正大学)、佐土原聡教授(横浜国立大学)、瀬戸寿一准教授(駒澤大学)
(官)総務省関東総合通信局、農林水産省関東農政局、国土交通省関東地方整備局、国土地理院関東地方測量部、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県(臨時)、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市
(事務局)国土地理院関東地方測量部