最終更新日:2024年3月8日

地理地殻活動研究センター談話会 講演要旨集(2024年)

講演要旨集(2024年)

1.地震時地盤災害推計装置SGDASの令和6年能登半島地震に関する推計結果について
 岩橋 純子 (地理情報解析研究室)

SGDAS(スグダス)は、国土地理院で2010年度~2012年度に開発され、その後の試験運用を経て、2019年6月から公式運用された地震時地盤災害推計装置で、地震後15分程度で地盤災害(斜面災害・液状化)の発生可能性の推計を行い、マップを作成して省庁・自治体等の防災担当者にレポートを配信するものである。本発表では、令和6年能登半島地震の本震に関する推計結果と、斜面崩壊・液状化の発生箇所の簡易的な比較結果について紹介する他、最近の改修内容、今後の展望について述べる。

2.小型GNSS観測装置の開発と試験観測
 松本 紗歩 (宇宙測地研究室)

宇宙測地研究室では,高い配点密度のGNSS観測で地殻変動の時空間変化を精密に捉える手法の開発を行っている.本研究では,高密度観測を実現するため,機動性に優れた小型GNSS観測装置を開発してきた.開発した小型GNSS観測装置は,GNSSアンテナおよび受信モジュールを内蔵した受信機部より構成され,持ち運びが簡便にできる点が特徴である.地殻変動把握への適用可能性の検証のため,令和2年12月頃から活発な地震活動が継続している石川県能登地方および局所的な地殻変動が顕著な千葉県内に装置を設置し,観測を実施してきた.本発表では,当該地域におけるこれまでの観測の様子とアンテナの設置安定性の検証の結果について報告する。

3.浸水被害軽減に向けた浸水推定図の活用方策の検討
 山後 公二 (地理地殻活動研究センター長)

令和5年7月に筑後川流域で豪雨による浸水被害が発生した。筑後川流域は、洪水に関する自然災害伝承碑が複数登録されており、度重なる豪雨災害の歴史がある。本発表では、筑後川流域で作成された浸水推定図をもとに、治水地形分類図、総務省の国勢調査の結果と重ね合わせ、地形分類別の浸水特徴や浸水地域とその周辺の人口構成の分析など、浸水被害軽減に向けた視点から浸水推定図の活用について検討した結果について報告する。

1.GEONETによる日本列島周辺のプレート境界面上の断層すべりの検知能力と検知時間
 水藤 尚 (地殻変動研究室)

いわゆる地震予知の3要素は、いつ、どこで、どの程度の大きさを知ることである。日本列島周辺のプレート境界面上において、GNSS、歪み計、傾斜計、地下水位観測、海底圧力計等の測地観測により、どこで、どの程度の大きさの断層すべりが検知可能かについての報告例が多数ある。しかし、いつを示す時間に関する検討は非常に難しく、ほとんど報告例がない。本発表では、断層すべりの検知能力の結果を基に、断層すべりが発生からどの程度の時間で検知可能かについて報告する。

2.2018年以降の南海トラフ沿いのSSEの検出
 小沢 慎三郎 (地殻変動研究室)

本研究では、GNSSネットワークによって検出された、南海トラフの沈み込み帯における 2018 年以降の遷移変動に基づきプレート境界面の滑りを推定した。 その結果、2018年7月から2019年8月にかけて日向灘北部と豊後水道で長期スロースリップ(l-SSE)が発生し、2018年末には日向灘南部で別のl-SSEが発生したことが示された。さらに、2018年から2019年の後、日向灘南部のl-SSEは2020年半ばから2021年初めと2023年1月に発生し現在も進行中である。 2019年の種子島地震後、約4年間にわたってl-SSEが発生した。 種子島地震の余効滑りのMwは6.7と推定され、本震(Mw6.4)よりも大きい。四国中部のl-SSE(Mw 6.5)、紀伊水道 l-SSE (Mw 6.3) が推定された。一方、2022 年 10 月の Mw 5.7 の地震後に検出された大隅半島沖の滑りは、2023 年 7 月まで継続した。2020年から紀伊半島でも非地震性滑りが発生した可能性がある。