最終更新日:2021年10月11日

国土地理院時報(2021,134集)要旨

Development of Prototype Program for Estimation of Fault Parameters and Slip Distributions using Markov Chain Monte Carlo Method
地理地殻活動研究センター  川畑亮二・宗包浩志
【要 旨】
 国土地理院では,大きな地殻変動を伴う地震が発生した際に,地殻変動量から矩形の震源断層モデルやすべり分布モデルの推定を行っている.推定したモデルは,地震発生後に臨時的に開催される地震調査委員会や地震予知連絡会等に報告され,地震活動の評価や検討に活用されるため,信頼性の高いモデルを迅速に構築する必要がある.
 モデル推定においては一般的にLevenberg-Marquardt法などの非線形インバージョンが用いられるが,パラメータの非線形性や観測データの制限等から解の初期値依存性が強い場合が多く,適切な解を求めるためにはモデル作成者の先験的情報が不可欠であるうえ,得られた解が妥当なものなのか,どの程度誤差を持っているのかを評価することが困難であった.そこで,本研究では,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いて,推定パラメータを確率的に評価するためのプロトタイププログラムを開発した.
 本プログラムを用いて,実際の観測データから震源断層モデルやすべり分布モデルの推定を行った.平成16年(2004年)新潟県中越地震の震源断層モデルでは,解が一意に決定された一方,2019年6月18日山形県沖の地震では,異なる断層面の向きを持つ震源断層が同時に推定された.平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の震源断層モデルでは,2枚の断層を用いてパラメータ推定を行い,観測値を説明するモデルを推定することができた.また,すべり分布モデルの推定では,平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震における観測データを用いて,各断層パッチのすべり量及び滑らかさのハイパーパラメータを同時に推定できることが確認された.

Three-dimensional Position Accuracy Verification of MMS Measurement Pointcloud including Satellite Invisible Section
基本図情報部  片山理佐子・関口泰徳・笹川啓
【要 旨】
 車載写真レーザ測量システムで取得される3 次元点群データの位置精度は,自車位置姿勢データの精度に左右される.特に,衛星測位による自車位置の精度に大きく依存しており,GNSS 衛星からの電波の受信状況による精度の劣化が課題となっていた.近年,自車位置姿勢データ取得装置の性能やデータ処理・解析技術の向上に伴い,GNSS の受信状況によらずに高精度な計測が可能となってきた.そこで,衛星測位情報を使用せずに得られた自車位置姿勢データを用いて取得した3次元点群データの位置精度に関する検証を行った.
 その結果,衛星測位情報を使用しない区間の距離が長くなるほど衛星測位情報を使用する場合と比較して較差が大きくなることや,カーブ箇所で時間と共に蓄積されるIMU の姿勢角誤差の影響が見られることが確認できた.

Updating Daily Solution of CORS in Japan Using New GEONET 5th Analysis Strategy
測地観測センター  村松弘規・髙松直史・阿部聡・古屋智秋・加藤知瑛・大野圭太郎
地理地殻活動研究センター 畑中雄樹
測地部 撹上泰亮
企画部 大橋和幸
【要 旨】
 国土地理院では,国家座標の維持や地殻変動の監視を主な目的として,GEONETの定常解析を実施し,全国約1300点の電子基準点の座標を「電子基準点日々の座標値(F3解・R3解)」として公開してきた.この解析ストラテジ(解析の手法や使用するソフトウェア等をまとめた方策の総称)は開発から10年以上経過し,最新のGPS衛星に対応していないことや,準拠する測地基準座標系が古くなるなどの課題が明らかになっていた.そこで,これらの課題を解決するため,解析ストラテジを更新した.新しい解析ストラテジ(第5版)の主な更新点は(1)解析ソフトウェア,(2)準拠測地基準座標系,(3)対流圏遅延推定方法,(4)固定点座標の計算手法の4点であり,特に,(3)対流圏遅延推定方法の更新により上下成分の安定性が向上し,(4)固定点座標の計算手法の更新により,国際的に計算された解析結果と±1 cm程度で整合する解を得ることができるようになった.これらの結果を踏まえ,2021年4月1日より,GEONET定常解析を第5版の解析ストラテジに切り替え,運用を開始した.計算された座標解を「電子基準点日々の座標値(F5解・R5解)」として公開した.

Development of Automatic Change Detection Method Using Aerial Photo and Satellite Image
基本図情報部  笹川啓・田代ゆかり・石塚麻奈・柴田光博
【要 旨】
 国土地理院では,地図更新候補箇所を効率的に選定する目的で,撮影時期の異なる空中写真から変化箇所を自動抽出する技術開発を行っている.本稿では,諸元の異なる空中写真と衛星画像を使用した自動変化抽出手法について,特に,画像間の明るさや色調等の違いに対して頑健に抽出できるような仕組み(エッジ情報に基づく類似度の導入)について詳細を解説するとともに,茨城県のつくば地区及び土浦地区の2つの検証地区において,実際に自動抽出された二時期画像間の変化に対し,目視による判読検証を行った結果を報告する.

The overview of the GSI Research and Development Basic Plan (Apr.,2019-Mar.,2024)
企画部 阪上雅之・宇田拓馬・多田直洋・石関隆幸
【要 旨】
 国土地理院では平成31年度から5年間の国土地理院研究開発基本計画を平成31年4月に策定した.社会の動向やニーズ,前計画の課題等をもとに新計画の骨子を基本方針としてまとめ,今後5年間の具体的な研究開発事項を重点課題として定めた.また,新計画では,新技術の活用による新たな価値の創出への貢献,生産性の向上や働き方改革への貢献などについて計画に盛り込んだ.さらに,地域における課題に対処するため,新たに地方レベルでも研究開発に取り組むことを記した.

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