最終更新日:2018年8月13日

2018年2月25日パプアニューギニアの地震に伴う地殻変動

合成開口レーダー(SAR)解析によって明らかとなった地殻変動

作成:2018年3月1日、更新:2018年8月13日 English version of this page

概要

2018年2月25日(UTC)にパプアニューギニアでMw7.5(USGS)の地震が発生しました。この地震に伴う地殻変動を把握するため、日本の地球観測衛星「だいち2 号」(ALOS-2)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR-2)のデータを使用してSAR干渉解析を行いました。

これまでの解析により、以下のことがわかりました。
  • 顕著な地殻変動が発生した領域は、震央付近を含み北西—南東方向に約170kmに及んでいます。余震分布とも調和的です。
  • 北行・南行両方向からの観測結果において同様の領域で衛星に近づく向きの変動が見られることから、鉛直成分は主に隆起であると考えられます。
  • 震央の東南東約70kmのクチュブ湖(Lake Kutubu)付近で特に変動量が大きく、1m以上隆起したと考えられます。
  • 得られた変動のパターンは地震波から推定されたメカニズム解と調和的です。
  • 地震の断層運動による変動の他にも、局所的な変動が山地斜面で多数見られ、地震の揺れによって誘発されたものである可能性があります。

[2018年8月13日更新]
南行のデータに対してSplit Spectrum法(Gomba et al.,2016)を適用して電離層誤差を低減したSAR干渉画像(図3)と、北行の高分解能(10m)モードのSAR干渉画像(図4)を追加しました。

SAR干渉解析結果

図1北行干渉画像
図1. 北行右観測ペアのSAR干渉画像 [PNG: 2.0MB]

図2:南行干渉画像
図2. 南行右観測ペアのSAR干渉画像 [PNG: 1.9MB]


図3. 南行右観測ペアのSAR干渉画像(電離層誤差低減処理後) [PNG: 1.9MB]


図4. 北行右観測ペアのSAR干渉画像(高分解能(10m)モード) [PNG: 1.4MB]

図:解析範囲図:広域
解析範囲

番号
観測日 観測時間
(UTC)
衛星
進行
方向
電波
照射
方向
観測
モード
*1
入射角
(震央付近)
垂直
基線長
ピクセル
スペーシング
KMZ Geo
tiff
備考
1 2017-07-31
2018-02-26
14:46頃 北行 W-W 34°- 42° +75 m 約200 m 3.8 MB 18.6 MB
2 2018-02-01
2018-03-01
02:05頃 南行 W-W 36°- 47° -120 m 約50 m 21.7 MB 171 MB
3 2018-02-01
2018-03-01
02:05頃 南行 W-W 36°- 47° -120 m 約75 m 11.1 MB 112 MB 電離層誤差
低減処理後
4 2018-01-01
2018-03-12
14:46頃 北行 F-F 39°- 42° -270 m 約150 m 576 KB 4.1 MB 電離層誤差
低減処理後
4 2018-01-29
2018-05-21
14:46頃 北行 F-F 34°- 39° -30 m 約150 m 453 KB 4.3 MB

*1 W:広域観測(Normal)、F:高分解能(10m)
(参考: ALOS-2プロジェクト/PALSAR-2(JAXA)


解析:国土地理院   原初データ所有:JAXA
本成果は、地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動を通して得られたものです。

地震概要

地震発生日時 2018年2月25日17時44分(UTC)
2018年2月26日02時44分(JST)
震源位置 6.149°S、142.766°E、深さ35.0 km
(USGS、2018年3月1日現在)
マグニチュード Mw=7.5(USGS、2018年3月1日現在)

分析に使用した人工衛星

日本の地球観測衛星 「だいち2号」(ALOS-2)

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