最終更新日:2018年2月16日

2018年2月6日台湾・花蓮の地震に伴う地殻変動

合成開口レーダー(SAR)解析によって明らかとなった地殻変動

作成:2018年2月9日、更新日:2018年2月16日 English version of this page

概要

2018年2月6日(UTC)に台湾・花蓮付近でMw6.4(USGS)の地震が発生しました。震央付近では建物が倒壊し死者が出るなど、大きな被害が生じています。この地震に伴う地殻変動を把握するため、日本の地球観測衛星「だいち2号」(ALOS-2)に搭載された合成開口レーダー(PALSAR-2)のデータを使用して解析を行いました。

これまでの解析により、以下のことがわかりました。
  • 米崙断層(Milun Fault)から嶺頂断層(Lingding Fault)北部にかけて、約15km にわたって断層沿いに顕著な地殻変動が見られます。
  • 米崙断層の東側では、特に大きな隆起と北東への変位が見られます。断層西側南部では沈降が見られます。
  • 花蓮市の中心部を通る米崙断層に沿って、変位の不連続が見られます。この活断層に沿って地表地震断層が現れている可能性があります。

3次元及び2.5次元解析結果

図1a 3次元

(a) [PNG: 1.2MB]

図1b 3次元拡大

(b) [PNG: 816KB]

図1. 3次元変動量分布。(a)全体図、(b)花蓮市周辺拡大図。図3(b)(c)と図4(b)(c)から計算。
色は上下変動(暖色系が隆起、寒色系が沈降)、矢印の向きは水平変動の方向、大きさは変位量を示す。

図2a準上下

(a) [PNG: 1.6MB]

図2b準東西

(b) [PNG: 1.8MB]

図2. 2.5次元変動量分布。(a)準上下成分、(b)準東西成分。図3(a)と図4(a)から計算。
(a)準上下成分では赤が隆起、青が沈降、 (b)準東西成分では赤が東への変位、緑が西への変位を示す。

※計算に使用したSAR干渉画像では、米崙断層を境に位相が不連続となっているため、断層東側の正確な変位量を求めることが困難です。ここでは、断層東側の南端部付近で変位量が小さいことから、南端部付近では不連続量が小さい(6cm以下)と仮定して計算を行っています。3次元解析や2.5次元解析の結果には、この仮定に起因する誤差が含まれている可能性があります。


2.5次元概念図 2.5次元解析の概念図

SAR解析結果

図3a南行右

(a) [PNG: 3.8MB]

図3b拡大図

(b) [PNG: 934KB]

図3c衛星進行方向

(c) [PNG: 939KB]

図3. 南右観測ペアの(a)干渉画像全体図、(b)干渉画像拡大図、(c)衛星進行方向の変位量(ピクセルオフセット法)。
(c)の図では寒色系が南南西方向(衛星進行方向)、暖色系が北北東方向への変位量を示す。
 

図4a北行右

(a) [PNG: 3.8MB]

図4b拡大図

(b) [PNG: 925KB]

図4c衛星進行方向

(c) [PNG: 946KB]

図4. 北行右観測ペアの(a)干渉画像全体図、(b)干渉画像拡大図、(c)衛星進行方向の変位量(ピクセルオフセット法)。
(c)の図では暖色系が北北西方向(衛星進行方向)、寒色系が南南東方向への変位量を示す。
 

図5a南行左

(a) [PNG: 2.8MB]

図5b拡大図

(b) [PNG: 729KB]

図5. 南行左観測ペアの(a)干渉画像全体図、(b)干渉画像拡大図。
 

 

番号
観測日 観測時間
(UTC)
衛星
進行
方向
電波
照射
方向
観測
モード
*1
入射角
(震央付近)
垂直
基線長
KMZ
3 2017-06-18
2018-02-11
03:48頃 南行 F-F 40° +223 m 1.4MB
4 2016-11-05
2018-02-10
15:50頃 北行 H-H 28° -159 m 1.5MB
5 2015-01-29
2018-02-08
04:22頃 南行 W-U 35° -358 m 210KB

*1 F:高分解能(10m)、H:高分解能(6m)、U:高分解能(3m)、W:広域観測(Normal)
(参考: ALOS-2プロジェクト/PALSAR-2(JAXA)

解析範囲図
解析範囲

解析:国土地理院   原初データ所有:JAXA
本成果は、地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動を通して得られたものです。

地震概要

地震発生日時 2018年2月6日15時50分(UTC)
2018年2月7日00時50分(JST)
震源位置 24.131°N、121.659°E、深さ17.0 km
(USGS、2018年2月16日現在)
マグニチュード Mw=6.4(USGS、2018年2月16日現在)

分析に使用した人工衛星

日本の地球観測衛星 「だいち2号」(ALOS-2)

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