国土地理院時報(1997,88集)目次

国土地理院における干渉SARによる地殻変動検出技術の進展

Progress in SAR Interferometry for the Detection of Crustal Deformation by the Geographical Survey Institute

測地部  村上真幸・藤原 智・飛田幹男・新田 浩・中川弘之
Geodetic Department Masaki MURAKAMI, Satoshi FUJIWARA, Mikio TOBITA, Koh NITTA, Hiroyuki NAKAGAWA


地殻調査部 小沢慎三郎・矢来博司
Crustal Dynamics Department Shinzaburo OZAWA, Hiroshi YARAI

要旨

国土地理院において地殻変動検出を目的とした干渉合成開口レーダー(干渉SAR)解析技術の開発を行っている。

この技術を用いることにより、軌道高度580kmの人工衛星から地表のわずか数センチメートルの変動を広い地域に渡って捉えることができる。

国内においては、「1995年兵庫県南部地震」に伴う地殻変動の検出にこの技術が初めて適用された。

本論では、干渉SARの原理を解説し、また地震・火山活動に伴う地殻変動のこれまでの検出例を紹介するほか、 最近の解析技術の進展や解析結果を用いた地震断層モデルの作成について報告する。

本文[PDF:2,466KB]

南関東・東海地域におけるGPS連続観測(1994年~1996年)

Continuous GPS Observation in the Southern Kanto and the Tokai Districts(1994~1996)

地殻調査部  鷺谷 威

Crustal Dynamics Department Takeshi SAGIYA

要旨

関東・東海地方のGPS連続観測網(COSMOS-G2)は、1994年に観測を開始して以来、現在の国土地理院のGPS連続観測網の先駆けとして貴重なデータを蓄積した。

1995年~1996年にかけて観測されたデータを精密解析することにより、 信頼性の高い地殻変動速度場が推定され、この地域のテクトニクスに関する新たな知見が得られた。

相模トラフ、駿河トラフ沿いのプレートが沈み込んでいる場所では、プレート間相互作用に伴う歪の蓄積が見られ、 伊豆諸島においてはマグマの貫入に伴う島の膨張変形が観測された。

また、伊豆半島がフィリピン海プレートから独立した運動をしていることも明らかとなった。

これら多くの貴重な成果をもたらしたCOSMOS-G2であるが、解析や観測網そのものに関しては、 対流圏遅延の補正が不十分なために見かけ上の季節変動が生じたり、 観測局のアンテナピラーが傾いてしまうなど、解決すべき問題が残っている。

国土地理院の全国GPS連続観測網は世界的な注目を集めつつあるが、長期にわたって高い精度を維持し、 貴重なデータを蓄積していくために、これらの課題を抜本的に解決していくことが必要である。

本文[PDF:1,404KB]

衛星データを用いた環境変化抽出システムに関する研究 ―土地被覆による環境変化の把握・分析手法及び マイクロ波画像の判読に関する研究―

The System for Environmental Change Extraction Using Satellite Data

―The Method of Environmental Change Understanding and Analysis by Land Cover and Interpretation for Microwave Imagery―

測図部  門脇利広・福島芳和・下地恒明・水田良幸

Topogarphic Department Toshihiro KADOWAKI, Yoshikazu FUKUSHIMA, Tsuneaki SHIMOJI, Yoshiyuki MIZUTA


地理調査部  政春尋志

Geographic Department Hiroshi MASAHARU


測地部  勝田啓介

Geodetic Department Keisuke KATSUTA

要旨

土地改良と大規模な宅地造成により環境が急速に変化しているタイ国南東部のラヨン地域を研究対象地域として、二時期のLANDSAT-TM画像を用いた土地被覆による環境変化抽出手法の開発及び地理情報システムを用いた環境変化の分析・解析手法の開発を行った。
また、マイクロ波画像で解像度の高いRADARSAT画像とLANDSAT-TM画像を使用して合成画像を作成し、 マイクロ波画像判読マニュアルを作成した。

本研究により、地理情報と土地被覆による環境変化の関係を定量的に計測することが可能になった。 また、作成したマイクロ波画像判読マニュアルにより、耕地界や詳細の植生をより明確に判断できることが確認できた。

なお、本研究は、科学技術振興調整費の総合研究「マイクロ波センサデータ利用等によるリモートセンシング高度化のための 基盤技術開発」の一部として行ったものであり、第1期「国土情報の把握手法に関する研究」(平成4年度~平成6年度) に引き続き、第2期「衛星データを用いた環境変化抽出システムに関する研究」(平成7年度~平成8年度)として、 タイ国農業協同組合省国土開発局と共同研究を行ったものである。

本文[PDF:1,981KB]

1997年5月八幡平澄川地すべり災害(速報)

The Landslide Disaster at Hachimantai-Sumikawa in May 1997(Preliminary Report)

地理調査部  星野 実・浅井健一

Geographic Department Minoru HOSHINO, Ken-ichi ASAI

要旨

1997年5月1日午前8時、秋田県鹿角市の澄川温泉で水蒸気爆発を伴う地すべりと土石流が発生し、澄川温泉及び赤川温泉を破壊した。
土石流は国道341号を越えて下流約1.7kmの砂防ダムで止まった。
この災害で,澄川温泉と赤川温泉の建物計16棟が全壊したが、前兆現象が察知され、災害発生前に避難が完了したため、人的被害は全くなかった。

地理調査部は、今後の二次災害防止や将来の土砂災害防止に資するため、5月27日~31日に現地調査及び資料収集を実施するとともに、空中写真を用いて災害地周辺の既存の地すべり地形分布図及び災害前・後の1/5,000地形図を作成した。
また、今回発生した地すべり及び土石流等の微地形分類を実施した。

本稿では、現地調査による災害地形の特徴及び災害の誘因となる周辺地域の地すべり地形分布、地形・地質の概要,気象について報告した。

本文[PDF:6,147KB]

空間データの標準化に関する研究

Development of Standardization on Spatial Data

地図部  奥山祥司

Cartographic Department Shoji OKUYAMA

測図部  佐藤 潤

Topographic Department Jun SATO

要旨

国土地理院は、建設省の官民連帯共同研究制度に基づき、平成8年度より「GISの標準化に関する調査」を実施している。 国際標準化機構ISO(TC211)においては、1998年を目途に包括的な地理情報標準の開発が行われており、本研究では実用レベルで早急に必要となる国内標準の開発を目的としている。

本稿では、この研究の概要、平成8年度研究成果、今後の進め方等を報告する。

本文[PDF:617KB]

日本国勢地図(CD-ROM)の発行

The National Atlas of Japan(CD-ROM)

地図部  島田信也

Cartographic Department Nobuya SHIMADA

要旨

国土地理院では、わが国の自然・社会等を1冊の大型地図帳(ナショナルアトラス)としてとりまとめた 「日本国勢地図帳」、「新版日本国勢地図」等を発行してきた。 近年のパソコンの普及や電子出版物の増加等の背景から、ナショナルアトラスについても、パソコンで容易に利用できるものにするため、 「電子アトラスシステムの開発」(時報77集参照)として研究開発を進めてきたところである。

本稿では、MicrosoftWindows95で使用可能となった「日本国勢地図(CD-ROM」について、その機能及びデータ等について報告する。

本文[PDF:2,107KB]

世界の測地座標系とその動向

Geodetic Datums in the World

測地部  松坂 茂

Geodetic Department Shigeru MATSUZAKA

要旨

測地座標系とその成り立ちについて解説し、界各地で用いられている座標系の主なものを紹介する。
また、測量技術の発展やグローバルな情報手段の展開に伴った測地系の改訂や要求される姿等について述べる。

本文[PDF:279KB]

各国のGIS活動状況1―日米のNSDI整備事情―

GIS Activities in Overseas Countries1 ―NSDI Development in US and Japan―

企画部  村上広史・関口民雄

Planning Department Hiroshi MURAKAMI, Tamio SEKIGUCHI

要旨

米国に始まる世界的なNSDI整備の動きの中で、我が国においても政府レベルでの取り組みが本格化している。
本稿では、NSDI整備の引き金となった米国大統領令について、 改めてその背景と主旨について論じ、我が国の取り組みとの違いについて考察した。
その結果、米国と我が国の取り組みの間に背景や考え方の違いがあり、 それが取り組みの違いとなって現れていることが明らかとなった。

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