1. 国土地理院の防災業務

国土地理院は「災害対策基本法」に基づく「指定行政機関」として、頻発する災害から国土と国民の生命・財産を守るため、測量・地図分野の技術を活かした災害対応関連施策を推進しています。   
  
【測量技術を活用して防災情報を収集・提供する】
 
 ・発災時には、緊急的な空中写真撮影や測量及びそれらの解析・判読によって、被災状況の把握に必要な情報を集め、速やかに関係機関に提供しています。
    
【国土の基本的な地理空間情報を整備・提供する】
  
 ・被災前後の比較による的確かつ効率的な被災状況把握等のため、平時から国土の経年変化等に応じ、空中写真・標高データ等の地理空間情報を整備・提供しています。   
 ・事前の備えとして、自然災害によるリスク情報の把握に役立つ防災地理情報を整備・提供しています。   
  

また、明治期以降150年以上にわたり集めてきた測量データや地形・土地条件変化の情報を使って、防災・減災対策に貢献しています。
下記に紹介するとおり、過去の災害からも地理空間情報を整備することの重要性を認識することができます。

水準測量が捉えた関東大震災直後の垂直変動

大正12年(1923年)9月1日の関東大地震の後、国土地理院の前身である陸地測量部は直ちに震災地の復旧測量を行いました。
水準測量の結果から、この地震に伴い、大磯や房総半島南端で1mから2mに及ぶ地殻変動があったことが明らかになりました。
関東大地震被災地(銀座)の写真
震災直後の銀座の様子(国立科学博物館提供)

水準測量結果の図
大正十二年関東震災地垂直変動要図

地図は悪夢を知っていた

現在の地表面の形状から、洪水、高潮など、そこに発生する自然災害を推測することができます。
昭和34年(1959年)9月26日夜、東海地方は伊勢湾台風に襲われ、木曽川、揖斐川、長良川の下流では、高潮などによる浸水で死者・行方不明者約5,000人を数える被害が発生しました。
この年の10月に地元の新聞に「地図は悪夢を知っていた」と題する記事が掲載されました。これは、災害が発生する前に実施された濃尾平野の水害地形分類調査における洪水危険予想区域が、台風による被害地域と一致したことを報ずるものでした。
伊勢湾台風を契機に、災害に対する事前調査の必要性が認識され、昭和35年(1960年)から土地の性状、成因、地盤の高低、干拓・埋立などの歴史を調査し、地図にまとめる土地条件調査が開始されました。

伊勢湾台風による被災状況(資料提供:国土交通省木曽川下流河川事務所)

中部日本新聞の切り抜き画像
昭和34年10月11日付中部日本新聞

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